「カスバの女」という唄がある。たくさんの歌手がカバーしているが私は藤圭子(2013年8月自殺。宇多田ヒカルのお母さんだよ)のものが好きだ。私はこの唄で外人部隊という言葉を初めて知った。小学生か中学生の頃だったと思う。

 ♪ここは地の果てアルジェリア♪という一節は、この唄の背景がアルジェリア戦争であることを示しているが、それを知ったのは世界史を勉強してからである。
 同じく♪明日はチュニスかモロッコか♪という一節があるように、アルジェリアはチュニジアとモロッコに挟まれ地中海に面した国であり、かつてフランスの植民地であった。そして唄の最後にある♪外人部隊の白い服♪の外人部隊とは、有名なフランス外人部隊(フランス軍に雇われた一種の傭兵隊)であろう。

 例によって前置きが長いのであるが、ヤフーニュースを見てたら「夏の甲子園出場高、『外人部隊率』を調査、…」(デイリー新潮)という記事を発見。
 調査というほど大層なものではなく、内容が薄いこともほぼ想像できる。PV稼ぎを狙った与太記事だろう。放っておけばいい。

 が、「外人部隊」というのはどうだ。まさか、高校野球にドミニカやベネズエラやプエルトリコ勢が参戦してきたわけではあるまい。もしそうなら甲子園はメジャー級。
 要するに都道府県代表と言いながら、他県出身者で構成されている学校が多いということなんだが、だから何なんだよ。
 別にいいじゃないか。

 他県の話をするのは何だから、我が埼玉代表の花咲徳栄のレギュラーを見てみよう。
 捕手・菅原君(岩手)、二塁・羽佐田君(兵庫)、遊撃・韮沢君(新潟)、右翼・井上君(大阪)、中堅・橋本君(北海道)。かれらは外国人ではないよ。埼玉生まれではないが、日本人だ。金で雇われた兵隊と一緒にするんじゃない。

 ダルビッシュ(大阪→東北高校)や田中将大(兵庫→駒大苫小牧)や坂本勇人(兵庫→青森光星学院)、ゴルフの宮里藍(沖縄→東北高校)、卓球の福原愛(宮城→大阪→青森山田高校)、体操の内村航平(福岡→東京・東洋高校)。みんな15歳で親元離れて他県の学校に進学してるじゃないか。それのどこが問題なんだ。

 一方でボーダレス社会とかグルーバル時代と言いながら、高校野球(スポーツ)で県境を問題にするのはおかしいだろう。
 という話は、過去に二度ほど書いた覚えがある。
 外人、外国人という言葉自体は、差別用語ではないが、他県出身者を外人部隊と称するのは差別である。差別が言い過ぎなら侮辱である。大人が高校生に対して使う言葉ではないということだけは、はっきり言っておこう。

 他県出身者は応援できないという人がいるのは知っているが、私は、加須うどんと十万石饅頭食ってたら埼玉県民ということでいいよ。