ペルソナと聞いて、「たしか、そんなクルマあったよな」と答えるのは、かなりの年配者である。バブル末期にマツダが発売し、販売開始から生産終了まで僅か4年という短命だったにも関わらず、強烈な印象を残したバブルの申し子のようなクルマだ。
 ちなみにペルソナとは仮面という意味である。

 あれから30年。いまペルソナはもっぱらマーケティングの世界で用いられている。この世界ではターゲットという言葉が一世を風靡したが、ペルソナはその進化版と考えてもらえればよろしい。

 皆さん生徒募集や塾生募集の際、ターゲットを絞りますね。学年とか地域とか成績とか。
 小4から中3まで、県内全域から、偏差値40以下から70以上まで全員を対象に募集をしている塾なんて聞いたことがない。学校だって同じ。

 ペルソナというのは、より明確に具体的に詳細に顧客像を作り上げること。その仮想の人物がペルソナ。
 企業側は、ペルソナに満足を与えるような商品・サービスを開発し、ペルソナを惹き付ける広告展開を行っていく。

 たとえば、こんな感じ。
 名前(仮):斉田 真子
 生年月日:平成16年8月2日
 通学校:越谷市立越谷中学校3年生
 部活:吹奏楽部(サックスパート)
 兄弟:長女(下に小学生妹)
 趣味:お菓子作り
 好きな芸能人:山崎賢人
 両親:父(45歳、公務員、私立大卒、年収750万円)母(パート、私立高校卒)

 こうやって顧客像を作り上げて行く。もちろん、適当に思いつきでやってはダメで、定量データ、定性データの収集と分析に基づく必要があり、ここをちゃんとやらないと成功しない。
ペルソナを作り上げるメリットは、関係者全員の意思統一が図りやすいこと。われわれは誰にどんな満足を提供しようとしているのか、誰に何をアピールしようとしているのか。今まで漠然としていて、それがために全員がバラバラの行動になっていたものが、一つにまとまってくる。

 マーケティング界においてペルソナという言葉自体は新しいが、何千人、何万人の顧客の中から、ある典型的な一人を探し出し、その人を徹底的にマークすることで売れる商品を生み出している企業は昔からある。つまり、基本的な手法としては決して新しいわけではない。

 学校における応用。
 入ってくれなかった人、受けてくれなかった人の意見はとりあえず無視していい。今まで一人も塾生を送ってくれなかった塾長の意見も同様だ。ファンでない人が好意を持って本当のことを言ってくれる可能性は低い。
 それよりも、選んでくれた人の意見を徹底的にインタビューしたほうがいい。「うちの学校のどこが気に入ったの?」「なんでA校をやめて、うちに来たの?」、「どうして、うちの学校を勧めてくれたの?」。聞くならこっちだ。
 私もそうなんだが、どうしても売れない理由の方に頭が行ってしまう。しかし、その理由はあまりにもたくさんあり過ぎて手に負えない。だったら、買ってくれた人の話を聞こう。それを参考にいいところを伸ばして行こう。そうすれば、同じような考えを持った人がもっと大勢いるはずだから、売り上げを伸ばすなら、その方が早いし確実だ。