職務専念義務とは懐かしい言葉だね。公立学校の先生にとっては毎度おなじみ、かつ結構重要な言葉なのだが、塾や民間企業の方々にとっては聞いたことはあるがよく分からんなという程度の言葉だろう。

 この話題のきっかけになったのは、次のニュース。
 ―以下、朝日新聞デジタルからの引用―
 勤務中に体育館裏でたばこを吸ったり、校外の飲食店で食事したりしていたとして、大阪府教育委員会は27日、府立高校の男性教諭(60)を地方公務員法の職務専念義務違反で減給1カ月(10分の1)の懲戒処分にし、発表した。
 府教育庁によると、処分理由は同校に赴任した2010年4月から今年9月までの9年間、勤務中に3442回(計約172時間)の喫煙を校内で繰り返し、休憩時間でないのに上司の許可を得ず、校外の飲食店で138回(計39時間)食事をしたというもの。今年5月には、授業中に生徒の胸を拳で突いたという。
 府立学校では08年度から敷地内での喫煙を禁止しており、目撃した教員が管理職に報告して発覚した。男性教諭は喫煙や飲食について「よくないという認識があったが、やめられなかった」と話したという。府教委は教諭の説明に基づき、職務を離れた時間を認定。今後、100万円程度の給与の返還を求める。
 ―以上、引用終わり― ※太字は筆者による。

 新聞記事というものは、できるだけ大きな数字を用いて読者の気を引こうとするものだ。この記事の場合だと喫煙回数3442回。しかし9年間合計であるから、計算してみると1日1~2回、1回当たり3分となる。校外での飲食も月に1~2回、1回あたり15分程度である。数が少なければ許されるというものでもないが、全国紙が大げさに取り上げるほどのニュースでもあるまい。が、いつも言っているように教員たたきは読者受けがいいのである。

 時を戻そう。
 (注:通常「本題に戻ろう」と言うべきだが、M1-グランプリで決勝に残った「ぺこぱ」が繰り返した用いたフレーズで、ちょっと流行りそうなので使ってみた)

 勤務時間中は職務に専念しなければならないのは民間企業でも同じはずだが、特に決まった法律がない。それに対し、公務員の場合は、国家公務員法地方公務員法に職務に専念する義務が規定されている。
 さらに、公立学校の先生であれば教育公務員特例法や各自治体が定める学校職員服務規程にも職務に専念する義務が規定されている。
 冒頭、先生にとって毎度おなじみと書いた理由がお分かりいただけるだろう。

 上に挙げたすべての法律・規則に職務専念義務が規定されているが、ここでは埼玉県立学校職員服務規程を見てみよう。

 第8条 職員は、法律又は、条例に特別の定めがある場合のほか、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のためにのみ用いなければならない。
2 職員は特別の定めがある場合のほか、校長の許可がなければ職務の場を離れることができない。(注:第3項は割愛。太字は筆者による)

「注意力のすべて」ってところがすごいでしょう。一瞬たりとも気を抜くなというわけね。まあ言われなくたって、一日中ほとんどの注意力は生徒の方を向いてるわけだけど。

 当該の先生は、1日3分ほど休憩時間以外で気を抜いてしまったわけだ。また、たぶん授業の空き時間だと思うが、飯を食ってしまった。しかも校長の許可なく校外で。それで職務専念義務違反。
 それにしても1回15分程度で、どうやって飯食ったんだ。学校の目の前に吉野家でもあったのか。

 時を戻そう。
 職務専念義務を厳格に求めるのなら、その前に勤務時間や休憩時間を厳格に守ってもらおうじゃないか。
 職務に専念しなくてもいい時間にも実際には専念せざるを得ないわけで、そこは見て見ぬふりで、「テメエ、たった今、3分気を抜いただろう」と言われてもね。