今日の話は、中学受験を指導している塾の先生にとっては初歩中の初歩の話であるが、読者の中には、そうではない方も結構おられるので、イロハの話をしておこう。

 1月10日(金)から埼玉県内私立中学校(全31校)の入試が始まる。
 8日午後、県学事課から応募状況(6日現在)が発表された。本番直前であるにも関わらず、いまだ中間発表であるのは願書受付期間を試験前日までとしている場合が多いからである。あと3日あるので最終ではないということだ。
 わざわざ直前になって出願することもあるまいと思うが、県内私立高校入試のようにほぼ内定のお墨付きをもらっての受験ではない、いわゆるガチな入試であるから、ギリギリまで様子見ということもある程度は考えられる。

 ほとんどの中学校は、申し合わせによる解禁日(初日)である10日に第1回目の入試を実施する。この点は高校入試と一緒だ。10日に試験を行わないのは、淑徳与野・自由の森学園・獨協埼玉・本庄第一・立教新座と、ごく僅かだ。

 10日は午前と午後にそれぞれ入試を設定している学校がある。同じ学校の午前と午後を受ける受験生もいれば、午後は別の学校に移動して受ける受験生もいる。受験教科が2科(算数・国語)か4科(2科+理社)なので、午前午後のダブルヘッダーが可能になる。

 合否結果は当日が主流で遅くとも翌日には発表される(基本インターネット発表)。受験生側は、第1日の結果次第で翌日以降の作戦を変えようと考えているはずだから、学校側には一刻でも早い発表が求められているのだ。

 中間発表の中で、初日である10日の出願者数に注目してみよう。
 まず浦和ルーテル学院の大幅増が目を引く。予想されたことだが、やはり「青山学院大学系属」の効果が大きかったと見え、前年最終が137人だったのに対し、今年中間では240人と約75%増加している。

 大宮開成は、前年最終が950人だったのに対し、今年中間では1534人と、60%以上の増加だ。
 県内私立の大学進学実績を見ると、栄東・開智の両校が突出した数字を示しているが、それに次ぐのが大宮開成と言っていいだろう(※高校入試あり、共学校という括りで)。
 大学進学という点だけで考えれば、公立で同等かそれ以上が期待できるのは、浦和・大宮・浦和一女・川越までだろう。市立浦和・川越女子あたりは微妙。もちろん、部活や学校行事、歴史と伝統など総合的に考えれば、いろいろな考え方が出てくるわけだが、こと大学進学に限れば圧倒的実績を残している学校であり、これが人気の源になっているのは間違いないだろう。

 大学進学という点では栄東や開智が、大宮開成のさらに上を行くわけだが、栄東は今年も中間発表で6025人の出願があった。昨年最終の6158人とほぼ同じだ。2月1日に解禁となる都内私立受験者が、本番前の力試しや予行演習のために受けてくるため、このような大量受験となる。

 埼京線利用で都内からの受験者も期待できる埼玉栄も午前804人→877人、午後639人→822人と、順調に増やしている。

 4ケタの出願者を集める学校と、2ケタに四苦八苦している学校とで、大きく二極化しているのが近年の埼玉県の実情で、31校中、定員を満たせるのが7~8校という状態が続いている。
 埼玉の私立中学校は概ね歴史が浅く、31校中27校は平成になってから開校している。
 平成の最初に出来たのが栄東(平成4年)で、その5年後に開智(平成9年)、さらに3年後に埼玉栄(平成12年)と立教新座(同)、その翌年に獨協埼玉(平成14年)が開校している。
 これらの学校がほぼ毎年定員を満たしていることを考えると、やはり先行者は有利なのだと考えざるを得ない。例外は平成22年開校とスタートの遅かった昌平くらいである。

 定員を満たしている学校は、前述のように大学進学で結果を出している。中学入試受験者及び保護者に部活実績を示してもほとんど意味はなく、届くのは大学進学実績である。
 生徒を集めるには出口の結果を出すことだ

 いやいや、教育ってそれだけじゃないでしょう、と言うのは勝手だが、そうこうしているうちに、進学実績を出した学校が、いつの間にか部活や行事にも結構力を入れる学校になってくる。そりゃそうでしょう。どんどんポテンシャルの高い子が入ってくるんだから。

 大学進学がすべてじゃないというのはその通りなのだが、それすら果たせない学校がどんなにきれいごとを並べたって、お客様は振り向いてくれないってことだね。
 栄東や開智や大宮開成にしたって、日本一の進学校を目指すと言っても、その中身は日本一の予備校ではないわけだよ。
 目的と方法論を一緒にしちゃいけない。出口の結果を出すというのは、それが方法論として今のところ最適だという判断でそうしているだけで、教育の最終目的がそこだとは誰も思ってないでしょう。
 生徒集めに苦労している学校は、もう一度そこのところ考えたほうがいい。