76回目の終戦記念日である。戦後何年かは引き算すれば分かるが、私の場合は自分の年齢プラス6年と計算するのが早い。
 生まれたのが戦争が終わって6年目の昭和26年だ。

 皆さんは「傷痍軍人(しょうい・ぐんじん)」という言葉をご存知か。
 戦争用語の一つだが、私がこの言葉を覚えたのは、小学校に上がる前だ。
 空襲、防空壕、疎開、代用食、灯火管制、赤紙、勤労動員。
 挙げたら切りがない。
 なにせ、周りの大人は両親も含め全員戦争体験者だったから、日常的に戦争用語が飛び交っていたのだ。

 その中の一つが傷痍軍人だ。
 私は小学校途中まで荻窪という所に住んでいたので、新宿にはよく出かけた(連れて行ってもらった)。
 ついでに吉祥寺の井の頭公園なんかもよく行った。

 新宿の繁華街では、軍服姿や白装束姿で、アコーディオンを弾いたりしている人をよく見かけた。
 私「あの人、誰?」
 母「傷痍軍人」
 私「しょういぐんじん?」
 母「戦争で怪我して目が見えなくなったり、歩けなくなった人」
 私「ふーん」
 母「でも、偽物だから」
 私「・・・」

 最後の「偽物だから」の部分が当時はよく理解できなかったが、つまりは、傷痍軍人を装った物乞いだ。
 
 いずれ死語となるだろうから、ちょっと書いておいた。

◆戦争の原因が分からない
 二度と戦争を起こしてはならない。
 自らは経験していないが、それはそうだと思う。

 戦争・紛争には原因がある。
 民族か、宗教か、領土か、経済か、政治か。
 それらの複合か。

 もし本当の原因が分かれば、防げるかもしれない。
 逆に言えば、そこが分からないから防げない。
 病気だって原因が分かれば防げるし、治療もできる。
 事故だって同じで、原因を特定できれば未然に防ぐことができる。
 
 もちろん、原因が分かっても防げないものはあるわけだが、防げる確率は高まる。
 だから、戦争を防ぐには原因を徹底究明することだ。
 我々が、歴史や地理や経済や文化などを学ぶ意味はそういうところにもある。

 というのが、元社会科教師の生徒向けの理屈である。

 憲法9条に一定の戦争抑止力があるとは思うが、刑法や商法があっても殺人や強盗は詐欺は起こる。
 法律は抑止力として万全ではない。
 「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決手段としては、永久にこれを放棄する」
 それはその通りで、そうありたいし、そうあるべきなのだが、問題は国際紛争がなぜ起こるかだ。
 原因が分からなければ、対策の立てようがないではないか。
 原因を徹底究明しよう。

 戦争は反対してるだけじゃだめなんだ。
 平和は祈ってるだけじゃだめなんだ。

 地理と歴史と政治経済を勉強しようぜ。
 と、これも元社会科教師の生徒向け理屈だ。