よく「部活や学校行事」などと二つを並列に語ることがある。私もよくやる。
だが、この二つ、学校の先生なら常識なのだが、少なくとも学習指導要領の上では性格の異なる活動なのである。
8月27日付の朝日新聞デジタルにこんな記事があった。
タイトルは”部活や修学旅行「安易に中止せず可能性模索を」 文科相”
記事本文は次のとおり。
「新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、萩生田光一文部科学相は27日の閣議後会見で、学校の部活動や修学旅行などについて『安易に中止ではなく、まずは延期を考えるなど可能性を模索してもらいたい』と述べた」
ここまではいい。
少し飛ばして。
「萩生田氏は、部活動や修学旅行、体育祭など学校の課外活動について、感染状況によってやむを得ず延期や中止することはあるとしつつ、できる限り子どもにとって思い出に残る学習機会をなんとか実施してほしい」と訴えた」
はい、ここ。
細かい指摘をするようだが、この部分に問題あり。
どこが問題なのかを言う前に、問題のない方の記事。
こちらは時事通信の記事。
「萩生田光一文部科学相は27日の閣議後会見で、新型コロナウイルス感染拡大に伴う部活などの課外活動や運動会、修学旅行について『中止を前提とするのではなく、実施の可能性を模索してほしいという気持ちは変わらない』と述べ、全国一律に中止とすることを改めて否定した」。
では、答え合わせ。
問題ありの朝日「部活動や修学旅行、体育祭など学校の課外活動について・・・」
問題なしの時事「部活などの課外活動や運動会、修学旅行について・・・」
朝日記事は、部活動も修学旅行も体育祭も全部まとめて課外活動としているが、これは誤り。
現行の学習指導要領(中学校学習指導要領の場合)は次のような構成になっている。
第1章 総則
第2章 各教科
第3章 特別の教科(道徳)
第4章 総合的な学習の時間
第5章 特別活動
この第5章「特別活動」の中に、3つの活動が示されている。
学級活動
生徒会活動
学校行事
さらに、学校行事として、5つの行事が示されている。
1)儀式的行事
2)文化的行事
3)健康安全・体育的行事
4)旅行・集団宿泊的行事
5)勤労生産・奉仕的行事
入学式や卒業式は儀式的行事、文化祭は文化的行事、体育祭や運動会は健康安全・体育的行事、修学旅行は旅行・集団宿泊的行事、ボランティア活動は勤労生産・奉仕的行事となる。
以上のように、記事に登場する体育祭(運動会)や修学旅行は、教育課程の中に位置づけられた特別活動であるが、部活動は教育課程外の活動である。
よって、朝日記事のように「部活動や修学旅行、体育祭など学校の課外活動」とするのは不適切である。
ところで。
学習指導要領の中に部活動についてまったく触れていないかというと、そうではない。
これは第1章「総則」の中にある。
少し長いが引用する。
「教育課程外の学校教育活動と教育課程の関連が図られるように留意するものとする。特に、生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化、科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等、学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際、学校や地域の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行い、持続可能な運営体制が整えられるようにするものとする」
という具合で、部活動の教育的な意義は認めているのである。
しかし、改めて考えてみると、部活動が法や規則の上で、きわめて曖昧な位置づけになっていることが分かる。
実態として学校の教育活動の中でかなり重要な位置を占め、生徒にとっても人によっては教科の学習以上に大きな割合を占める部活動が、実は正規の教育課程の中に存在しないという現実。
部活動で1日2時間の練習をすれば平日だけで(120分×5日)で600分。
週5単位の科目でも(50分×5回)で250分にしかならないわけだから、生徒の学校生活の中でどれほど大きな存在であるかが分かる。
もちろん、それだけに大きな教育的成果が期待できるとも言える。
ちなみに、この部活動週600分(休日を含めればもっと多いが)を、先生の授業持ちコマ数に換算すると、(600分÷50分)で12時間(12コマ)分となる。
これだけの指導をタダ同然でやってるの?
まあ勤務時間内の仕事と言ってしまえばそれまでだが、それにしても、もうちょっと金銭的な配慮があってもいい。
話が別の方向に行ってしまったが、文化祭・体育祭や修学旅行は、正規の教育課程に含まれる活動であるから、時期や内容の変更はあるにしても何とか実施できるよう努力するのが学校の務めなのである。
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