貸した金も返って来ないが、貸した本も返って来ないね。
 私から「学校のマーケティング戦略」(フィリップ・コトラー)借りた人、読んだら返してね。
 それと、「非営利組織の経営」(ピーター・ドラッカー)も。
 ドラッカーの方はkindleでも読めるからいいけど、コトラーのはもう売ってない。
 ずいぶん昔に読んだ本だが、時々、「あれ、何だっけ」と思い出すことがある。

 時代が大きく変わっているし、日本の実情に合わない点も多いので、今さら感はあるが、たまにはこんな本を読んでみるのもいい。

 企業経営について書かれた本は数多あるが、学校経営についての本は少ない。
 経験談的なものだったら、それなりにある。
 「私はこうして学校を変えた」的なやつ。
 まあ、これはこれで参考になる部分は多いのだが、その時代、その環境、その立場だから出来たんでしょうという面も多分にあって、応用が効きにくい。
 もっと普遍的というか、理論的なものが欲しい。

◆民間人入れるなら
 最近下火になったが、民間人から校長など管理職を迎えるというのがあった。
 これ、根本的な思い違いがあるんじゃないかと思う。
 会社経営の方が難しくて、学校経営の方が簡単という勘違い。

 学校は非営利組織である。
 儲けに走っている学校経営者がどこかにいたが、ごく少数か例外であろう。
 合法的に金儲けするなら会社の方がいい。

 で、大事なポイントは、会社など営利組織の経営と、学校など非営利組織の経営は異なるということ。
 どっちが上か下かとか、どっちが難しくどっちが易しいとかではなく、異質であるということ。
 だから、営利組織の成功事例を非営利組織に持ち込んでもそのまま成功するとは限らない。

 民間人採用するなら、このあたりの意識を確認したほうがいい。
 「民間の経験を生かしたい」なんていうのは即失格。
 土壌が違うんだよ。
 それに、民間で本当に経営したのかどうかも疑問だ。
 部長やりました、課長やりましたなんていうのは経営じゃない。
 学校で言えば、学年主任や分掌主任やりましたというのと同じだ。
 
 そんなクソ経験より、一から学ぶ姿勢や意欲の方がよほど重要だ。

◆非営利の難しさ
 営利組織である会社は、いろいろあっても最終的には「利益の最大化」ということで一体になれる。
 あるいは、なりやすい。
 むろん会社経営が簡単だと言うつもりはない。
 株主や従業員や顧客、場合によっては地域社会の利益を確保しつつ、会社としての利益最大化を目指すわけであるから簡単なはずがない。

 非営利組織である学校は、会社のような行動原理の統一が難しい。
 ステークホルダー(関与者)の数も多く、関わり方も強く利害は対立しやすい。
 会社経営で善であったことが、学校経営でも善であるとは限らない。

 校長先生たち。
 ホント、難しいことやってるね。
 私が安易に批判したり、悪口を言ったりしないのはそこだよ。

◆一億総教育評論家
 人の人生の半分は学校とつながっている。
 若いうちは児童・生徒・学生という立場で学校とつながり、子供が出来れば今度は保護者として関わる。
 トータルすれば20年や30年、人によってはそれ以上学校とつながっている。

 そりゃあ、学校や教育について、それらしいこと言えるようになる。
 ただ、いわば顧客の側にいたわけで、先生として学級経営や学校経営に関わった経験はないので、見方は一面的だ。
 だがそれでも、学校のステークホルダーには違いないから、その声は無視できない。
 このあたり、会社経営にない難しさだろう。

 会社においても、株主と従業員と顧客の利害はしばしば対立する。
 ただ前述のように最終的には「利益の最大化」という点でまとまれる可能性が高い。
 潰れて得する者はいないのだ。
 あとは方法論の問題だ。

 では、学校という組織は、その行動原理をどこに求めるか。
 会社における「利益の最大化」に相当するものは何なのか。
 経営者の思想・信条、理念・哲学を超えたところにそれがあるはずだ。

 生徒に正解のない問いに立ち向かうことを求めるなら、先生方もこの難問に挑まなければなるまい。