文部科学省が教員採用状況について調査し、31日、その結果を発表した。
昨今、教員採用は低調であり、それもあって今年度、全国の公立学校で計2558人の教員不足を生じていたというニュースである。
これはもちろん捨て置けない問題である。
が、それ以上に、読者受け、視聴者受けするネタでもあるので、マスコミはこぞって報道した。
全国で教員2558人不足、担任不在の事態も…小学校の採用倍率は過去最低に(読売新聞)
教員不足、全国で2065人 校長が担任務める例も 文科省調査(朝日新聞)
公立学校で2558人の教員不足 深刻な実態浮き彫り 文科省初調査(毎日新聞)
全国で教員不足2558人 文科省初調査(産経新聞)
まず確認しておくが、公立学校教員の身分は地方公務員である。
都道府県立学校の教員であれば、都道府県(実務的には都道府県教育委員会)が採用計画を立て、試験を実施し、職員として採用する。
市町村立学校の教員の場合もそれに準じた形となる。
よって不足が生じたとすれば、都道府県や市町村教育委員会が見通しを誤ったのである。
個々の都道府県、市町村の教員採用について文部科学省は関与していない。
ついでだから給与の話もしておくと、小中学校など市町村立学校教員の給与については、市町村ではなく都道府県が負担し、なおかつ都道府県支出分の3分の1は国が負担する。
小中は義務教育であるから、市町村の収入により格差が生じてはいけないということから、そのような形になっている。
話を採用に戻す。
新聞記事では、不足数が2558人とあったり、2065人とあったりする。
これは、年度当初(2558人)で見たか、5月1日時点(2065人)で見たかの違いである。
不足が明らかになり、新学期の授業が始まる前に、急きょ非常勤などの補充を行ったものと考えられる。
不足人数の学校種内訳は次のとおりだ。
小学校 1218人
中学校 868人
高校 217人
特別支援学校 255人
合計 2558人
全国の公立小中高校・特別支援学校には、約83万人の教員が配置されている。
全国の公立小学校の数は約1万9000校ある。
中学校は約9200校、高校は約3500校ある。
約2500人の不足は、冒頭述べたように放置できない問題ではあるが、全体のスケールを見た上で冷静に論じる必要があるだろう。
マスコミは、「教員のなり手不足」→「ブラック職場」という方向に誘導したいのだろう。
採用試験の倍率は確実に下降しており、その原因の一つが教員の働き方や給与体系などにあるのも事実だが、そのことはひとまず措こう。
今回問題になっている教員不足は、正規教員の不足ではない。
採用試験の倍率が下がっていると言っても、定員を割っているわけではないので、正規教員はきちんと回っている。
だが、学校では、予想外のクラス数の増減や、先生方の産休・育休・病休が発生する。
それをカバーするのが常勤や非常勤講師の先生、すなわち非正規教員だ。
ところが、非正規教員の供給源である講師登録者が減少している。
採用試験の倍率低下により、受験者の多くが正規採用に回り、講師登録が期待されている採用試験不合格者の数も減っているのだ。
繰り返しになるが、今回問題視されている教員不足は、正規教員不足ではなく、非正規教員不足である。
予算がなかったわけではなく、人手の不足である。
非正規はけしからんと言う人もいるが、こうした調整弁を用意しておかないと、教員数は限りなく増加する。
いったん正規採用されたら定年までその身分を保障されるのが公務員だからだ。
一定の調整弁を設けなければ地方財政がもたない。
予備軍たる非正規教員の層を厚くするには、教員人気を高めなければならず、それには労働条件や給与条件を見直すことも必要だ。
ただし、それにはさまざまな法改正が伴うので時間がかかる。
給与を上げれば、その分人件費が増大する。
原資は税金だから、それには国民的合意が必要だろう。
今般問題視されている教員不足を、そうした5年10年かかる根本的な問題と直結してしまうと、解決が遅くなる。
最後はそこに行き着くとしても、当面の課題を非正規教員の供給源不足と捉えれば、また別の方策も浮かんでこようというものである。
個人的には、非正規教員の資格要件緩和なども考えてもらいたいと思う。
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