2022年4月1日から、民法の改正により成人年齢が18歳となる。
 明治9年(1876年)以来の改正ということだから実に146年ぶりということになる。
 これにより、同じ高校3年生でも、成年者と未成年者が混在することになる。

◆成人年齢の変更でも変わらないもの
 成人年齢の変更で何が変わるかを見る前に、変わらないものを挙げておこう。

 1 飲酒や喫煙は20歳から
 2 ギャンブルは20歳から
 3 国民年金加入は20歳から
 このあたりは、今までどおりだ。
 なお、選挙権に関しては、先行して法改正が行われており、すでに18歳に引き下げられている。

◆成人年齢の変更で変わるもの
 こちらをしっかり把握しておかなければならない。
 主なものを挙げてみる。

 1 自分1人で契約できる
 成人年齢(18歳)に達すると、親の同意なしに1人で有効な契約ができるようになる。
 たとえば、クレジットカードや携帯電話、自動車購入、アパートの賃貸などの契約ができるようになる。
 実際には資力審査などがあり、無職・無収入の高校生が契約できる可能性は低いが、法的には可能になるということだ。

 従来は20歳未満の未成年がした契約は、親がそれを取り消すことができた。
 しかし、今後は親が取消することはできなくなる。
 
 近年、高齢者を狙った詐欺行為が横行しているが、これからは若者をだまして契約させようとする悪徳業者が激増するだろう。
 悪徳業者側から見れば、新たな有望市場が生まれたわけで、かれらは、手ぐすね引いて待っている。
 契約に関する知識をしっかり叩き込んでおく必要がある。

2 親権に属さないようになる
 成人年齢(18歳)に達すると、自分の住む場所を自分の意思で決めることができる。
 進学や就職など自分の進路についても自分の意志で決めることができる。
 自分の財産を自分で管理することができる。
 訴訟を起こすことができる。

 あくまでも法的には、ということである。
 だから、実際には親の役割や親子関係が急には変わらないと思うが、成人になりたての若者を騙そうとする悪い大人がいるので、学校としては、そのあたりの教育をしっかり行わなければならない。

◆変わる三者関係
 学校においては、学校・生徒・親の三者関係も難しくなりそうだ。
 今までは何かにつけて保護者の同意を取り付けていたが、成人年齢に達すれば保護者という存在がなくなる。
 書類に保護者欄を設けても保護者がいない生徒がいる。
 保護者会や保護者面談を開こうにも、保護者がいない生徒がいる。
 保護者の同意が必要な生徒と、必要ない生徒が混在するのは、なかなか面倒なことだ。
 
 しかし、形式や名称の変更で乗り越えられる問題はまだいい。
 成人年齢(18歳)に達したとはいえ、かれらは精神的、経済的には成人としての実態を有しているわけではない。
 今までなら、トラブルに巻き込まれても学校や保護者が守ってやることができた。
 しかし、それができなくなる。
 まったく出来ないということではないが、出来ることが限られる。
 
 学校はこれまでも自由や権利と、それに伴う責任について指導してきたと思うが、その指導は理念の範囲にとどまっっていた。
 が今後は、責任がリアルに本人にかかってくる。
 そして、残念ながら学校や先生は助けてやれない。
 そういう場面を想定しての教育が急務であろう。

◆成人でも生徒であることに変わりない
 法的に青年であろうと未成年であろうと、生徒であることに変わりはない。
 したがって、教育目的を達成するために、あるいは安全を確保するために必要なルール(校則など)を定めるのは法的にも許容されるだろう。
 ただし、法的に認められていることを制限するルールを定めるのは難しくなりそうだ。

 昨今、校則が話題になることが多いが、これを機に見直しを図る必要がありそうだ。
 訴訟だって起こせるのだから、生徒総会レベルの話が裁判所レベルの話に発展する可能性だってある。

 教育の場で生ずるさまざまな問題について深く議論、検討されないまま法改正が進んでしまった感があるが、決まってしまったものは仕方ない。
 学校には、成年、未成年に関わらず、生徒の心身の成長を促し、安全を守る責任がある。