埼玉県公立の専門高校及び専門学科についての調べである。
 昨年(令和4年度)入試で、欠員募集を行った学校・学科を系統別に見ると次のような結果となっている。

◆欠員募集実施率は50%超え
【農業系】
 6校・18学科中、9学科で欠員募集
 欠員募集実施率50%
【工業系】
 15校・49学科中、30学科で欠員募集
 欠員募集実施率61%
【商業系】
 17校・29学科中、13学科で欠員募集
 欠員募集実施率45%
【家庭系】
 4校・8学科中、5学科で欠員募集
 欠員募集実施率63%

 以上は、いわゆる伝統的な専門学科であるが、半数以上の学科が定員に満たず、欠員募集を実施した。
 その他の学科では、音楽科が3校・3学科すべて、体育科が2校・2学科すべてで欠員募集を行ったほか、1校1学科しかない書道科、福祉科、人文科、国際文化科なども欠員募集を行っている。
 専門学科で欠員募集を免れているのは、理数科、外国語科といった進学系学科と看護科、美術科くらいである。
 また、専門学科ではないが、総合学科も9校9学科中、6学科で欠員募集を行っている(実施率67%)。

 要するに時代の流れで、需給バランスが完全に崩れている
 各校の募集努力だけではどうしようもないところに来ているのだ。
 結局、中長期的には統廃合によるバランス回復しか道がないだろう。

 それと、もう一つ考えられるのは大胆な学科改編だ。
 たとえば工業系では、機械や電気といった伝統的な学科は苦戦しているが、情報技術などには集まっている。
 また、商業系では、商業は不人気でも情報処理にはそれなりに集まっている。
 その昔、工業にしろ商業にしろ、時代の要請があって作られたのが専門学科なのであるから、現代に即した改編があって然るべきだろう。

 というようなことは県教委も先刻お見通しで、いろいろ検討しているところだろう。
 私のような立場の人間は、入口の募集と出口の進路のことしか頭にないが、統廃合や学科改編に当たっては教員配置の問題なども考慮しなくてはならない。
 学科を無くすのはある意味簡単だが、専門教科を教える先生方の身分保障も同時に考えなければならず、一気には進められないのだ。

◆募集は結局のところ知名度
 ベースにあるのは時代とのアンマッチであるが、そうは言っても、各校の募集努力で、ある程度の改善は見込める。
 では、どのように生徒(受験生)を集めるかであるが、結局のところ知名度に尽きる。
 むろん、他にもさまざまな要素はある。
 が、名前を知られていないということは、存在を知られていないということであり、そういう学校に生徒が集まるわけがないから、やはり第一に知名度である。

 世の中で良く売れている商品は、もっとも品質に優れた商品ではなく、もっとも良く知られた商品である。
 われわれは、ほとんどの商品について専門知識を持っていない。
 まあ、自分はそうじゃないと言われる方もいると思うが、私などは車や住宅といった高額商品はもとより、食品だって衣料品だって薬品だって、何も知っちゃいない。
 要は、知っている商品、聞いたことのある商品、みんなが良いと言っている商品を買っているだけだ。

 学校も同じだ。
 受験生がその学校の名前を何回目にしたか、何回耳にしたか、募集はそれで決まる。
 
 学校の中身は?
 だからそれは、学校の名前を知った後の話だ。

◆純粋想起を目指す
 皆さんも聞いたことがあると思うが「純粋想起」という言葉がある。
 知っているクルマのメーカーを挙げてくださいなどと尋ねられて、ノーヒントでトヨタ、ニッサン、ホンダなどと答えられれば、それが純粋想起だ。
 対して「助成想起」というのがあって、こちらは好きなクルマのメーカーは、と選択肢をあげて尋ねるものだ。
 
 一般に、車や高級ブランドなど高額商品や、一生に何度も買わない商品は純粋想起率が低いと購入につながらないと言われている。
 学校もある意味高額商品(サービスか?)であり、購入頻度は高くない。
 よって、純粋想起率を高めないと、受験や入学に結び付きにくい。

 私立と言われてパッと思い浮かぶ学校
 伝統校と言われてパッと思い浮かぶ学校
 進学校と言われてパッと思い浮かぶ学校
 スポーツの強い学校と言われてパッと思い浮かぶ学校
 工業高校と言われてパッと思い浮かぶ学校

 そういう学校を目指すのだ。
 うちの学校知っていますか?、聞いたことありますか?
 それで「はい、知ってます」「聞いたことあります」というのは、目指す知名度ではない。

 特に、専門高校・専門学科の先生方。
 純粋想起率を高めるよう頑張ってもらいたい。