明日、埼玉県内私立中学校の入試が行われる。
 これから書くことは、塾の先生方にとっては何を今さらという内容になると思う。
 よって試験前日でお忙しい塾の先生方は、本日スルーしていただこう。

 本日の内容は、私立中学校入試にご縁が少ないと思われる公立高校の先生方向けである。

 「中学入試は公立高校には関係ない。別世界の話だ」
 と、思っている方も多いと思われるが、とんでもない。
 そういう方は平成の中頃あたりで時計が止まっている。
 
 都内私立はその多くが中高一貫であり、募集のメインは中学校入試となっている。
 完全一貫体制を敷き、高校からの募集を行わない学校や、行ったとしても少数という学校が増えている。
 極端な話をすれば、東京において高校入試とは都立高校入試である。
 埼玉は、そこまでは行っていない。
 
 高校募集を行わない完全中高一貫は浦和明の星女子のみで、他の私立は中学校はあるものの募集数は少なく、メインは相変わらず高校入試だ。
 だから埼玉の場合、高校入試とは公私立高校入試である。

 東京は特別。
 東京イコール日本ではない。
 これは様々な場面で言えることだが、一方で首都圏というくくりもある。
 まわりを取り囲む埼玉、神奈川、千葉は否が応でも東京の影響を受けざるを得ないのである。

 少なく見積もっても10年、もしかしたら20年かかるかもしれないが、入試の主戦場が高校入試ではなく中学入試という時代が埼玉にもやって来るだろう。
 埼玉が、川一本隔てただけの東京とまったく違う方向に進むとは考えにくいのである。

 県内で募集のメインが中学入試に移りつつあるのが開智と栄東だ。
 開智は所沢に途中から入ることができない中等教育学校を作った。
 岩槻の開智中高には高校からは入れない。
 高入生が入れるのは、まったく別に運営されている開智高等部だ。

 栄東の中学募集は定員240人だが、高校募集は内部進学含め400人だ。
 実際の数は別としても表面上はすでに中学募集が高校募集を上回っている。

 淑徳与野や昌平は中学定員を増やすことになっている。
 また、浦和学院は中学校設置に動いている。

 こうした現状を見るにつけ、入試の主戦場が徐々に高校から中学へ向かっていると考えざるを得ないのである。
 もちろん、公立高校の多くは引き続き高校単独校として残るだろう。
 だが、経済的にゆとりがある家庭や、教育に関心の高い家庭から順に主戦場を移して行くのである。

 高校授業料無償化が進んでいるが、それがさらに加速し、所得制限のない完全無償化になったらどうなるか。
 高校で金がかからないなら、中学校でかけてもいいではないかと考える人だって出てくるかもしれない。

 中学入試は関係ないなどと言っている場合ではないのだ。