ちょっとした必要あって「ペーパーティーチャー」について少し考えた。
 「ペーパーティーチャー」というのは教員免許状を有しながら教職に就いていない者を指す俗語である。
 ペーパードライバーからの派生であろう。
 運転免許は持っているが実際には運転することのない人。かれらは更新だけはしていてゴールド免許だったりする。

 「ペーパーティーチャー」は全国に約400万人いると言われている。
 ずいぶんといるものだ。
 もっとも教員免許状は大学等で必要な科目を履修すれば誰でも取得できる。
 採用には試験があるが、免許状取得に資格試験のようなものがあるわけではない。
 高校教員だったころ、「私も教員免許を持ってるんで」と、マウントを取りに来る保護者(主に母親)が時々いたが、だから何なんだ。

 で、昔なら「別に先生になる気はないが、何かの役に立つかもしれないから、保険を掛けるつもりで一応取っときました」みたいな人は相手にしなくてよかったが、そうも行かなくなってきた。
 それで、文部科学省からもペーパーティーチャーを掘り起こせと号令がかかり、全国各地の教育委員会が取り組んでいる。

「教師不足の解消に向けた各教育委員会における取組事例」(令和6年6月17日 文部科学省)

 上記資料に埼玉県教育委員会の取り組みも紹介されている。
 下は埼玉県教育委員会によるセミナー案内チラシ。
ペーパーティーチャーセミナー_埼玉県教育委員会

 なぜ、このような事態になったか。
 ●児童生徒数が多かった時代に大量の教員を採用した。
 ●その世代が退職期となったため、それを補填するために新卒者を大量採用した。
 ●20代、30代の教員が増え、それに伴い産休・育休取得者が増え、臨時的な教員の需要が高まった。
 ●従来なら正規採用されなかった者が、いわば予備軍の形で控えており、かれらが臨時的な教員として穴を埋めた。
 ●しかし、受験者が少ない現在、多くが正規採用となり、予備軍が不足し、緊急の事態に対応するのが難しくなった。
 と、ざっくりこのような事態が生じているため、さしあたり、採用期限付きの、つまり非正規の臨時教員増加を図ろうというわけである。

 あくまでも緊急避難的な措置であり、新卒の教員希望者を増やさないと根本的な問題は解決に向かわない。

 それにしてもペーパーティーチャーで大丈夫なのか。
 だって、免許を取ってから一度も公道を走ったことがない人をいきなりタクシードライバーとして雇うようなものではないか。
 まあ、それだけ事態は逼迫しているということなんだろうが。

 さて、前にも書いたように、ここは私の専門領域ではない。
 よって名案など思い付くわけはなのであるが、無理やり自分のフィールドに寄せて言えば、ただ単に教員の魅力をアピールするだけではダメだろう。
 魅力を訴えるだけでは人は集まらないのだ。
 私は、学校説明会や個別相談で与えるべきもう一つは「安心・安全」だと言っている。
 危険や不安と背中合わせの魅力ではダメなのだ。

 県は楽し気な様子を映したプロモーション動画を制作しているようだ。
 それはそれでいい。
 が、精神的に安心感が得られる仕事であり、安全に守られている職場であることも併せて伝える必要があるだろう。