本日、新聞紙上で埼玉県公立入試志願者数・倍率が発表された。昔は、県教委が解禁時間を設定した上で報道機関向けに先行してデータを提供し、新聞社はそれを元に紙面を作成し、翌朝の朝刊に掲載するというスタイルだったが、今は県教委自らが、夜の段階でホームページに掲載してしまう。新聞よりネットの方が早いのだ。
よって、情報アンテナが高い塾の先生や受験生保護者は、おそらく朝刊を待たずに、志願者数・倍率を知ることができたであろう。
情報収集が困難だった時代は、人より早く入手することで優位に立てたが、誰もが簡単に情報を手に入れられるようになった時代では、必ずしも早さは重要ではなく、むしろその情報をどう読み解き、次の行動に生かせるかということが重要になってくる。
分析力を磨け。そう自分自身に言い聞かせている。
当事者。ここでは受験生や保護者のことだが、かれらはミクロにしか関心がない。つまり、自分の受ける学校の倍率がどうだったかということだ。
だが、塾や学校の先生方はマクロの視点を持たなければなるまい。
ミクロの現象は、マクロの変化の中で起こっているのだ。
◆公立希望者は年々減り続けている
今回、全日制の全体倍率は1.12倍だった。前年度比0.04ポイントの低下である。
4年前までは(28年度入試)までは1.20をキープしていた。その後3年間は1.16で推移してきて、今回の結果である。
この流れで行けば、次年度(令和3年度入試)では1.10を切り、1.09とか1.08といった低倍率になる可能性もあるだろう。
下の表は、第2回進路希望調査(12月15日調査)の時点で、高校進学希望者、全日制希望者、県内公立希望者がそれぞれどのくらいいたかを年度ごとにまとめたものだ。
表だけでは分かりにくいのでグラフ化してみよう。
少子化で中学校卒業予定者数が減っているから、それにつれて各数字が低下して行くのは止むを得ないとしても、高校進学希望者や全日制希望者の減り方に比べ、県内公立希望者の減り方が急であることが分かるだろう。
◆12月15日調査から実際の出願にかけての動き
以上は、12月15日時点の数字であるが、ここから先、実際の出願ではどのような変化が起きているかを見てみよう。
12月15日の調査以降、三者面談や個別相談などを経て、公立希望から私立単願希望へと変わっていく生徒がいるであろうことは容易に想像できるが、問題は減少の実数であり減少率である。
これも一応グラフ化してみよう。
他の年度が志願先変更後の確定数・確定倍率であるのに対し、赤の線で示した今年は変更前の数字であるが、志願先変更は学校間の行ったり来たりであり、全体は変わらないから、これで比較してもいいだろう。
減少率は2.38%で、平成30年度の2.36%を上回り、ここ5年間では最大である。
希望者の減少は主に、普通科で起きている。
だが、県立浦和は第2回調査から実際の出願にかけて4人しか減っていない。同じく浦和一女はマイナス1人、川越はプラス3人、川越女子はマイナス3人と、このクラスは動いていない。
動きが大きいのは、市立浦和マイナス131人、大宮マイナス61人、浦和西マイナス142人、蕨マイナス82人、越ケ谷マイナス126人あたりだが、これらの学校が大きく減らすのは例年のことだ。ただ、このクラスだとワンランク下げても、まだ公立上位に止まる。
以下、玉突き式でランク下げが続くのであるが、これが最下位まで波及するかというと、そうはならない。途中で「ランク下げで公立よりも私立単願」という選択肢が浮上してくるからだ。その結果、下位校を中心に普通科29の学科・コースが定員割れという状態を引き起こす。
近年、私立各校が求める、いわゆる偏差値基準が高騰しており、偏差値50~55帯ではかなり選択肢が限られようになってきた。「私立単願」という手が使いずらいのだ。
そうなると、残るは公立間での移動しかなくなり、その目安となるのが、希望校調査の倍率や、前年度の倍率だ。「入りたい学校よりも入れそうな学校」という選び方をされるので、年度によって倍率が乱高下することがあり、読みずらいのだ。
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