専門学科訪問シリーズ4校目は鴻巣女子高校だ。今回の「よみうり進学メディア」用取材はこれで終了。
 ところで。
 すでに取材済みの学校の先生がこのブログを読み、「これが(この内容が)記事になるのか」と聞いてきた。
 それはない。
 このブログは先生向けだ。中学生は読んでない。
 中学生にはちゃんと中学生向けの記事を書く。

◆保育・家政科学はまずますだが普通科は定員割れ
 同校は、普通科・保育科・家政科学科の3学科からなる。

 令和3年度入試の結果は次のとおり。
 【普通科】0.91倍
  募集人員    80人
  受検者     67人
  入学許可候補者 74人
 【保育】1.18倍
  募集人員    40人
  受検者     47人
  入学許可候補者 40人
 【家政科学】1.10倍
  募集人員    40人
  受検者     44人
  入学許可候補者 40人

 保育科と家政科学科は定員を満たしているが、普通科は第二希望での合格者を含めても定員に達しなかった。
 というわけで、生徒募集面の課題が普通科の定員確保であるのは明らかだ。
 駅の反対側に鴻巣高校がある。こちらは普通科1.09倍、商業科0.83倍。
 今の時代、普通科ということなら共学の鴻巣に分がありそうだ。

 県内に女子校は7校あるが、浦和一女・熊谷女子・川越女子は進学で売る学校だ。全国出場する部活があったり、オリンピック選手が出たりと運動も盛んだが、基本的には文武両道の進学校。
 松山女子・久喜は運動部中心に部活が盛んで結果も出ており、部活狙いの受験生も多そうだ。
 春日部女子は方向性がはっきりしないが、外国語科もあり、どちらかと言えば文武両道の進学校路線か。
 そうした中、鴻巣女子はどのような路線を選択するのか。
 女子校狙いの層は一定数存在するが、それだけでは定員の確保は難しいだろう。

◆なぜ保育科を選ぶべきなのか
 同校保育科は「全国公立高校唯一の保育科」である。
 同校家政科学科は「県内唯一の家政科学科」である。

 家政科学の方は、越谷総合技術や新座総合技術に食物調理科や服飾デザイン科があって内容的にはかぶるが、保育科は正真正銘オンリーワンである。
 資格制度上、この学科を卒業したからといって直ちに保育士の資格が取れるわけではない。
 しかし、子供が好きで、将来は保育士と決めている生徒にとって、指導陣に恵まれているこの学校は最適な選択だと言える。

 進路は保育系の短大や専門学校が中心だ。
 だったら普通科からでもいいじゃないか。
 という考え方もできるが、
 短大・専門学科の2年間で(最近は3年もあるが)、大急ぎで必修単位を取って、あたふたと実習をやって、大慌てで就活をこなすより、高校からじっくり学ぶこっちの方がいいじゃないかとも言えるわけである。
 たぶん、短大・専門学校に行って、「それ、高校のとき学びました」ということも出てくると思うが、そうなれば仲間内のリーダーとして、みんなから頼られる存在になるし、それもまたいいじゃないかということだ。
 基礎知識と技術をがっちり身に付けた子は強いぞ。
 それ以上に、保育の心を育んできた子は無敵だ。

◆オンリーワンでは説明不足だろう
 ナンバーワンやオンリーワンを探すのに苦労している学校が多い中、すでにこの学校はそれを持っている。
 しかし、なぜオンリーワンであり続けられるかというと、その裏にはニーズの少なさがある。
 ニーズが多いところには必ずライバルが現れるものだ。

 少子化と言えど、保育(士)に対するニーズは間違いなくある。
 目指す生徒・学生は多いし、採用したい園もある。
 女性の社会進出が進めばさらに増える可能性がある。

 要するに、「保育士になりたいニーズ」はあるが、それを「高校から学びたいニーズ」は少ないのだ。
 とすれば、重要なのは、高校で保育(科)を選ぶことの意味や意義、あるいはメリットをいかに伝えるかだ。
 オンリーワンと主張するだけでは伝わらない。ないしは伝わりにくい。
 ホームページやパンフレットを見ても、その点にはまったく言及しておらず、私としてはそこは非常に残念に思うところである。

 駅から徒歩15分とアクセスは良い。
 校舎は新しいとは言えないが、清潔に保たれている。
 特に専門2学科は、目的意識が明確な生徒の集まりなので学びに対する意欲は高い。
 あと少し、募集作戦を変えてみるといい。 
 

今日は、6月9日に迫った保育実習のオリエンテーション授業を見学