余計なお世話だが、読者の中には公立高校の先生をおられると思うので、一言を言っておこう。
 今日午前中(たぶん11時頃)、埼玉県公立入試の第2回進路希望状況調査の結果が発表された。
 受験生が倍率を気にするように、先生方も自校の倍率が大いに気になるだろう。
 そこで一言。

◆学校と受験生、思いは常に交錯する
 前年同期や前年最終倍率が低かった学校や、第1回調査の倍率が低かった学校は、少しでも上がってくれないかと願っていただろう。
 倍率というのは、受験生は少しでも下がって欲しいと考え、学校側は少しでも上がって欲しいと考えるものである。
 先生方が、「増えた」「上がった」と喜んでいるとき、同じ数字を見て、受験生は逆に落胆し、不安にさいなまれているのである。

 学校や先生は選ばれる側でもあるが、選ぶ側でもある。
 同時に、受験生もまた選ぶ側でもあり、選ばれる側でもある。
 両者の思いは常に交錯する。

 数字が出る前までは、学校側が選ばれる側であり、受験生は選ぶ側であった。
 しかし数字が出た瞬間、その数字が高ければ高いほど受験生は選ばれる側としての思いを強くする。
 そして明日からまた、思うような数字が出なかった学校は、選ばれる側としてさらなる行動が求められる。
 
 どっちも大変だな。
 ただ数字をこねくり回している私は、何とお気楽なことか。

◆倍率変動は隔年現象によるものだ
 で、一つ言っておくが、倍率の上がり下がりの主たる原因は隔年現象である。
 今年はなぜ高いんだろう(低いんだろう)?
 それは隔年現象で、前年高かったから低くなり、低かったから高くなったのである。
 上位1割と下位1割の学校には目立った隔年現象は現れないが、間の8割の学校には多かれ少なかれ隔年現象がみられる。
 ベースに隔年現象があり、そこに説明会の回数を増やしたとか、内容を変えたとか、何か新しい「売り」が加わったというような要素が加わる。
 
 もちろん、きれいに1年おきになる場合もあれば、高い年、低い年が連続する場合もある。その場合でも3年目にはちゃんと揺り戻しがある。
 警戒しなければいけないのは、上がったり下がったりを繰り返しながら、長期スパンでは右肩下がりになっているケースだろう。
 学校人気なんてものは、1年単位で急に上がったり下がったりはしないものである。
 少なくとも5年分、できれば10年分くらいの数字を眺めてみるといい。
 何か気づきがあるはずだ。
 今日目の前にした数字だけを見て、原因は何だろうなどと議論しても、正しい結論は導けないのだ。

◆今日の数字(倍率)は過去のもの
 もう一つ言っておきたい。
 今日皆さんが目にした数字(倍率)は現状を反映したものではない。
 過去データである。
 あれから1か月、受験生は激しく動いている。

 私なども、これから本出願までの1か月で受験生がどう動くかといった言い方をする。
 むろん、今日の数字(倍率)を見て動く受験生がいるのは確かだが、実はすでに動いている。
 1か月の間の個別相談の結果かもしれないし、模擬試験の結果かもしれないし、面談の結果かもしれない。

 今日発表された数字(倍率)なので、ついつい、いま現在のものと錯覚してしまいそうだが、あくまでも過去データである。
 思いのほか数字が伸びなかった学校もあるだろうし、その逆の学校もあるだろう。
 どちらにしても、それは今日現在を表したものではない。
 残された時間で、なにがしかの行動を起こそうと考えている学校は、出発点の認識を誤らないことだ。

◆今からやれることもある
 公立の中には、まだ説明会や相談会を残している学校もあるが、大方の学校はもう受験生を集める機会は終わっているだろう。
 
 残された受験生との接点はホームページやSNSだ。
 公立ではツイッターやインスタをやっているところは少ないのでホームページのみか。

 本番が近づくにつれて、受験生の閲覧頻度は高まる。
 ちなみに、私立だと大宮開成昌平などが入試時期限定の特設ページを設けて、トップ画面をいつもと変えている。一つの考え方だが、公立ではそこまでは難しそうだ。
 花咲徳栄は、トップページに受験生応援動画を貼り付けている。入試問題解説も掲載している。このあたりは公立でも採用できそうだ。

 今さら学校紹介や学校説明でもないだろう。
 必要なのは受験生への励ましだ。
 「3学期が始まりました」のニュースもいいが、受験そのものだけでなくコロナに対する不安も抱える受験生に対し、何も言わないという手はないだろう。

 「換気のため窓を開けて実施します。暖かい服装でお越しください」
 まあ、言われなくても受験生はそうすると思うし、親がそうさせると思うが、こういう一言が大事だと思うよ。
 
 今や一人一台、タブレットやPCを持っている時代だ。
 有効に使わせてもらおう。

 公立の先生方、キーワードは「励まし(激励)」、あとは「安心」かな。
 何も情報発信しないと受験生はどんどん不安になって逃げだしてしまうかもしれない。