岐阜県教育委員会が、県立学校に「研修主事」を配置することを決めた。
県立学校ということだから、基本的には高校と考えていいだろう。
校内研修を企画、岐阜県立校に「研修主事」配置 校内教員起用、学び合い推進(岐阜新聞 2月6日)
「研修主事」とは聞きなれない言葉だが、法的根拠はこちら。
学校教育法施行規則第四十五条の二
小学校には、研修主事を置くことができる。
2 研修主事は、指導教諭又は教諭をもつて、これに充てる。
3 研修主事は、校長の監督を受け、研修計画の立案その他の研修に関する事項について連絡調整及び指導、助言に当たる。
小学校には、とあるが、中学校も高校にも準用されるので、小中高すべてということ。
◆「置くものとする」と「置くことができる」
ちなみに、学校の編成に関わる法や規則では、「置くものとする」と「置くことができる」の二つの定め方がある。
教務主任や学年主任、進路指導主事や生徒指導主事は「置くものとする」だが、今回の「研修主事」は「置くことができる」である。
したがって、法的には置かない選択もできるが、岐阜県立高校では置くことを決めたのである。
多くの学校では、校務分掌の中の教務部内に研修担当を置いていると思われる。
中には、研修を担当する委員会を設置している学校もあるかもしれない。
いずれにしても研修を扱う部署や担当者がいないということはないだろう。
それで十分機能しているのだから、現場としては「研修主事」など新たに設ける必要はない。
◆文部科学省の意図は
ただ、文部科学省としてはそうはいかない。
教員の資質向上を名目に始めた教員免許更新制度が頓挫してしまったから、それに代わる新たな研修制度や体制を構築しなければならない。
「研修主事」の配置は、その一つであろう。
役所的には、法や規則を改正し、予算をつけ、これで初めて何かをやったという実績になる。
現場としてどうかは、たぶんあまり考えていない。
◆昭和からあった主任手当
岐阜県では、「研修主事」に月額4200円を支給する。
20日間で割ると1日当たり210円。
実にショボい金額だ。
私が教員だった時。
昭和の終わりごろだったと思うが、法や規則で「置くものとする」とされた主任には手当てが支給されるようになった。
教務主任や進路主任を務めていた私は、それをもらっていた。
記憶では1日当たり200円。
なんだ、その頃と変わっていないじゃないか。
前述したように、すでにどこの学校にも研修担当は存在しており、計画立案や運営に携わっている。
別に新たな業務が加わるものではないから、1日200円程度で十分という考えなのだろう。
◆研修は義務であり、権利である
教育基本法9条に、「法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」とある。
研究と修養、縮めれば研修となる。
研究は、教材研究という言葉にあらわれているように、専門的な知識や技術を高めることである。
修養は、さまざまな体験をして、幅広い教養を身につけ、一個の人間として己を高めることである。
優れた教員になるために研修するのは義務であるが、個人の力だけでは限界がある。
そこで、教育基本法9条2項では、「前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない」としている。
つまり、研修の充実を図るのは国や自治体の義務であり、そうした研修を受けるのは教員の権利ということだ。
「研修主事」などという肩書を作って、僅かな手当てを支給するだけでは、国はその責任を果たしているとは言えない。
国や自治体には、教員が研究や修養に励める環境づくりをお願いしたい。
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