臨時休校、部活禁止という中で、「全国高等学校総合体育大会(通称インターハイ)」が開催できるのかどうか。

◆3年生は公式戦経験せずに引退
 すでに、春の都道府県大会及び地域ブロック大会(関東大会)は中止となっている。したがって、多くの高校生アスリートにとって、残された唯一の公式戦がインターハイ及びその予選なのである。
 もしこれが中止となると、3年生になってから一度も公式戦を戦うことなく、いわゆる「引退」を迎えることになる。もちろん、サッカー・ラグビー・駅伝・バレー・バスケなど、冬場に3年生も出場可能な大会が設定されている競技も多いが、その対象となるのは一部の強豪校であるから、大部分の高校生アスリートにとっては、やはりインターハイが競技生活の集大成となるわけである。

 なお、野球については、皆さんご存知のとおり、全国高等学校体育連盟(高体連)に属さない全国高等学校野球連盟(高野連)が独自の活動をしており、先の選抜大会同様、他競技とは一線を画した議論及び決定がなされるだろう。

◆今年のインターハイは全国分散開催の予定だった
 インターハイは2004年(平成16年)以降、一県単独開催から地域ブロック開催となっている。全国を東・中・西の3ブロックに分け、原則持ち回りで開催されている。
 ここ数年の大会は次のとおり。
 昨年:「南部九州総体2019」 鹿児島県・沖縄県・熊本県・宮崎県
 今年:「北関東総体2020」 群馬県・栃木県・茨城県・埼玉県
 来年:「北信越総体2021」 福井県、長野県、石川県、富山県、新潟県

 「北関東総体2020」は当初、その名のとおり北関東4県で開催されることになっていた。しかし、東京オリンピック・パラリンピックの影響で競技会場や宿泊施設の確保が難しいことから、北関東4県で11競技、残り19競技を全国に分散して開催することになった。
 群馬県で総合開会式とサッカー、栃木県で男子バレー、茨城県で水泳・女子バレーなど、埼玉県で少林寺拳法。
 以下、青森県(相撲)、岩手県(卓球・ハンドボール・ボクシング)、山形県(体操)、石川県(バスケット・自転車)、静岡県(陸上)、三重県(アーチェリー)、滋賀県(テニス)、京都府(ソフトテニス)、大阪府(ボート)、和歌山県(ヨット)、兵庫県(柔道)、岡山県(剣道)、広島県(ソフトボール)、香川県(カヌー)、愛媛県(バドミントン)、長崎県(なぎなた)、大分県(フェンシング)。
 という具合で、合計21府県による分散開催という異例の形で開催を目指した経緯がある。

◆県予選、ブロック予選が開催できるのか
 本大会の日程は、令和2年8月10日(月)~24日(月)である。ほぼ、野球の甲子園の日程と重なっている。
 まだ4か月先の話であるし、これ自体は開催可能かもしれない。ただ、その前に出場校を決める予選が必要だ。
 出場校の決め方は、競技により、また都道府県によりまちまちだが、一般的には地区予選を経て都道府県予選という順番になるだろう。陸上や水泳などは都道府県予選の後にブロック予選がある。
 では、この異常日程の中で、まして2か月以上にわたり練習もできていない状況の中で、地区予選や都道府県予選などを組み込めるだろうか。
 通常なら、中間考査の終わった5月下旬から地区大会が始まり、期末考査の始まる7月初めまでに都道府県大会を終えるという形だが、予定通り5月7日以降に学校が再開されたとしても、5月下旬からの地区予選開催はかなり無理がある。
 本大会は夏休み中開催が大前提であるから2学期以降への延期はあり得ない。

 想像もしていなかった異常事態の中、学業と命と健康が優先されるのは当然だ。どっちを犠牲にするかと問われれば、それは学業に決まっている。
 が、それにしても。
 私も部活顧問経験者の一人であるが、3年生がこのまま大会を経験せずに引退することになったとしたら、一体どんな言葉をかけてやればいいだろう。ちょっと思い浮かばない。