取引のある小さな小さな印刷会社からの質問。
 「学校案内パンフレットはなくなりますか?」
 なるほど。紙の印刷物の需要動向は死活問題だからね。

 では、お答え。
 「なくなります」。
 ただ余命10年はある。

 うちの学校、やっぱ動きが早いでしょうと、先進性をアピールしたい学校がここ数年以内に廃止に踏み切るケースはある。
 また、その動きを見て、慌てて真似する主体性のない学校もあるだろう。
 だが、作らないということが学校業界の常識になるにはどうしたって5年、10年はかかる。

 われわれ制作サイドは、学校案内パンフレットなどのことを募集(用)ツールと呼ぶ。
 ツールは道具だ。
 だが私は、むしろ戦いのための武器という言い方を好んで使う。
 
 生徒募集という市場(マーケット)においては、他校との戦いになる。
 まさか素手で戦うわけにも行くまい。
 何か武器を、それも性能の良い武器を持って戦わなければならない。
 そしてここまで、パンフレットやポスターは最強の武器であった。

 しかし、ここにWEBサイトやSNSといった新兵器が登場した。
 さて、これら新兵器はパンフレットやポスターといった旧兵器に完全にとって代われるだろうか。
 一人一台端末時代が到来したことにより、新兵器の強みはますます増してきた。
 よって早晩、主役は交代することになるだろう。

 だが、ここで注意しなければならないのは戦い方である。
 戦術である。
 これから、どういう戦い方が有利なのか。
 わが校はどういう戦い方にして行くのか。
 戦い方が決まれば、自ずから、それに相応しい武器が決まる。

 つまり、パンフレットやポスターを制作するかどうかなど、どうでもいい。
 そんなことは議論の対象にさえならない。
 おそらく、制作しない学校が登場すれば、うちはどうしようかとくだらん議論を始める学校が出てくると思うから、今のうちに言っておく。
 考えるのはそこじゃない。
 勝てる戦い方だ。
 そのために必要な武器がパンフレット、ポスターであれば引き続き作ればいい。
 それだけの話だ。

 しつこく言っておくが、武器を捨てることが先に来てはならない。
 新しい武器を手に入れ、その扱いに習熟するのが先決だ。
 その上で、要らなくなった武器を廃棄する。
 生徒募集という戦いに空白があってはならないから、この方式を採るべきだ。

 個人的には、WEBサイトやSNSは、パンフレットやポスターに代わりうる強力な武器になり得ると思う。
 受け取る側(受験生側)は、物心ついた時にはスマホが目の前にあった世代だから、WEBサイトやSNSが主要な情報収集手段であることに何の違和感もないだろう。
 問題は発信側(学校側)だ。

 ここまででお気づきと思うが、私は、「そろそろパンフレット要らないんじゃない」派である。
 自分で制作の仕事を請け負っている身でありながら、そう思う。
 しかし、手段と目的を混同するのは避けたい。
 パンフレットやポスターを作ることをやめれば、一瞬「えっ」とか「おっ」とか思わせることはできる。
 じゃあ、それでどれだけ生徒(志願者)を増やせるのか。

 目的は生徒(志願者)を増やすことだ。
 生徒(志願者)の質を向上させることだ。
 そのための最強兵器がパンフレットやポスターから、WEBサイトやSNSに移行すると考えるなら、その武器に磨きをかけよう。
 それが先だ。