「よみうり進学メディア11月号(授業特集)」の取材で東京成徳大深谷高校に行って来た。
 
 浦和の住民である私にとって深谷は遠い。
 高崎線(上野東京ライン)で1時間。昨日、東京駅近くで打ち合わせがあったが、浦和・東京間は30分弱であるから2倍以上だ。
 がしかし、これは私の個人的事情であって、県北にお住まいの方にとっては近くの学校ということになる。

 3年生進学選抜コースの英語の授業。
 担当は中村真吾先生。
 大学院修了後、有名予備校で講師を務める一方、東京成徳大深谷でも十数年間教鞭をとっていたが、2018年から専任となった。

 案内の先生から、「冒頭は先週あった中間考査の答案返却なので取材は途中からにしますか」と尋ねられた。
 いやいや、悲喜こもごもの答案返し、いいじゃないですか。
 先生がどんな態度で、どんな言葉をかけながら返すのか。
 生徒はどんなリアクションをするのか。
 せっかく取材に来たのだから、そこから見せてもらおう。

 答案返しは淡々と進んでいく。
 その場で「ヤッター!」とか叫ぶ男子が一人や二人いるものだが、そういうのはない。
 どうやら今日は取材が入るというので、生徒はちょっと緊張しているようだ。
 「いつもはもっと賑やか」(中村先生)。
 そうか。普段のペース乱して申し訳ない。
 それにしても、ここの生徒は、純朴だね。擦れてない。

 廊下を歩いていると、みんなよく挨拶をしてくれる。
 先生方も同様。中にはすれ違いざま一瞬立ち止まる仕草を見せて挨拶してくれる先生もいる。
 これには恐れ入った。
 女性の先生だったが、なかなか美しい所作だ。
 私も練習しておこう。

 さて。
 答案返しが終わり今日の本題へ。
 昨日は模試(ベネッセ・駿台記述模試)があったが、英作文の出来がいまいちだった。
 そこで中村先生、急遽プリントを作成し、今日の授業に臨んだ。
 さすがの早業。
 だが、鉄は熱いうちに打てだ。

 導入に用いたのはGoogle翻訳。
 問題をGoogle先生に翻訳させたら、こんな英文になりました。
 でも、これってちょっとおかしな所ありますね。さあ、どこでしょう。
 なるほど。今風の入り方だ。
 ネットの翻訳をそのまま信じちゃいけないよという警告にもなっている。

 長年予備校で教えていた中村先生だから、高度なテクニックとか超裏技的なことを教えるのかと思ったが、そうではなかった。
 先生から「中学英語」と言う言葉が何度か飛び出した。
 つまり、難しい単語を使うのではなく、できるだけ一般的な単語を使うのがコツ。

 例題として京都大学の問題など取り上げていたが、先生の手にかかるとあら不思議、中学生でも知っているような基本的な構文と単語で書けちゃった。
 こりゃあ生徒もやる気出るわ。
 いきなり翻訳じゃなく、いったん英語に直せそうな日本語に訳してから取り掛かる。
 「意味が通っていれば、採点者も減点できないんだよ」
 と、このあたりは予備校経験の長いベテラン先生らしいアドバイス。

 比較的静かに授業が進んでいるのは、取材が入っ緊張感だけでなく、生徒同士の教え合いなどアクティブな活動がコロナの影響で抑え気味になっていることもある。
 本当はもっと賑やかにやりたいのだが。
 というのは、多くの先生方の悩みだろう。

 授業後のインタビューで、高校受験を控えた中学3年生に伝えたいことを尋ねた。
 「どこの学校に入ったとしても英語には力を入れて欲しい」
 「学校が早く決まっても英語の勉強を止めないで欲しい」
 「これからは大学受験でも、就職でも英語だけは避けて通れない」
 まあ、英語の先生としては当然の言い分だ。
 「あの実はこれ、昌平高校の校長先生が話されていたことなんですけど、他校の話、持ち出しちゃまずいですか」

 いいえ、まずくないですよ。
 自校だろうが他校だろうが真理は真理。
 先生が常日頃感じていたことと、たまたま一致したということですから。