インナープロモーションという言葉がある。
 会社なら社内プロモーション、学校なら校内プロモーション。
 組織内の意志統一や士気の高揚を目的として内部向けに実施されるプロモーション活動。
 
 昔から自嘲的に言われているのが、社内の人間が一番会社のことを知らないということだ。
 社員が新製品の発売をテレビCMで初めて知ったなどという話は、たぶん受けをねらった笑い話と思うが、大きな組織ならありそうなことだ。
 
 学校はそれほど巨大な組織ではないが、分業化が進めば進むほど、別の分掌や他学年の動きなどが分かりにくくなってくる。
 むろん職員朝会や職員会議等、情報共有は図られるだろうが、それでもすべてはカバーできない。

◆先生方は自校のホームページを見ているか
 はたして先生方は自校のホームページを見ているか。
 毎日見ているよ、という人もいるだろう。
 熱心に最新情報を上げている校長、教頭先生や部活顧問の先生なら必然的に年中チェックすることになる。
 しかし、それ以外の先生はたぶんあまり見ていないのだろう。

 私は4月以来、何度も県内公私立全校のホームページを閲覧した。
 最新情報をチェックする。
 説明会情報が上がっているかどうかチェックする。
 進路状況が更新されているかどうかチェックする。

 以上が最近の主な目的だが、年度当初ということもあり、半固定情報の一つである校長メッセージなども確認している。
 この4月、特別支援などを除く全日制公立高校では、58人(58校)の校長異動があった。
 当然、校長名や写真、挨拶やメッセージなどは更新されなければならない。
 が、所沢北、飯能、越谷西、桶川西の4校はいまだに校長情報が更新されていない(令和4年5月10日18時現在)
 所沢北と飯能は、前校長が写真入りで紹介されている。越谷西と桶川西は、前校長の名前・写真・挨拶は消えたが、新データの更新はなく「校長室」というページを開いても白紙状態だ。まあ、旧データを削除しただけましだ。
 このまま1年通すつもりか。

 それにしても、誰も気づかないとはどうしたことだろう。
 要するに見ていないのだ。

 受験生や保護者や、中学校や塾の先生や、私のような入試界隈のゴロツキの方がよっぽど見ている。
 これ以外には学校を知る手掛かりがほとんどないから、ホームページが頼りだ。
 なのに当人たちが、自分の学校が世間にどのように伝わっているかを知らない。
 これから説明会や個別相談が盛んに行われるようになるが、当の学校の先生がホームページに出ている情報すら知らないのでは、聞く側も不安になるだろう。

 これがインナープロモーションの必要性を訴える理由だ。

◆担当は情報の先生、って、いつの時代の話だ
 一昔前なら、情報担当の先生が不在だと更新が滞るというようなことがあった。
 (この場合の情報担当というのは、「情報」という教科を担当している先生という意味だ)
 まあ、情報科の先生は仕事柄コンピュータに強いのは当然であるから、ホームページの担当は情報科の先生というのはよくあったケースだ。

 が、これはもう平成で終わった話だ。
 ゼロから作り上げるには相応の知識や技術が必要だが、年度更新や日々の更新ならその気になれば誰だってできる。
 授業でも業務でもパソコンやタブレットを全員が使っている時代だ。
 ホームページ担当は情報科の先生という発想はいかにも古い。

 この記事をお読みになって、「うちはそうじゃないですよ」というのであれば結構なことだ。
 だが、今年になってからでも、知り合いの校長や教頭にホームページがらみの問い合わせをしたところ、「今年は情報の先生が異動になって…」という答えが何件か聞かれたので、「ホームページ担当=情報科教諭」という学校がいまだにあるということだ。

◆必要なのはコミュニケーション力
 普通科校であれば情報の先生は1人か2人しかいないだろう。
 うち1人は非常勤というのはよくあるケースだ。

 では、情報技術科などを擁する工業系専門高校はどうだろう。
 知識や技術を持った先生が複数いるはずだ。

 だが、それらの学校のホームページが適宜更新され、過不足ない情報発信が行われているかというと、必ずしもそうではない。
 ということは知識や技術の問題ではないのである。

 何の問題か。
 コミュニケーション(力)である。
 結局のところ、ホームページや他のSNSなどはコミュニケーション・ツールであるから、担当者はそれに長けた者が選ばれるべきなのだ。
 また、担当者になったら、その力を磨くべきなのだ。