今年もその季節がやってきた。
 毎年5月は専門高校を訪問し取材することになっている。
 その様子は「よみうり進学メディア6月号(埼玉版)」で記事掲載する。

 今年度は、農業系・工業系・商業系・家庭系から各1校を取り上げるが、昨日は熊谷農業を訪ねた。
 農業系専門学科を擁する学校は、いずみ、児玉白楊、秩父農工科学、鳩ヶ谷、羽生実業などがあるが、いずれも他系統の専門学科や普通科との複合型であるが、校名に農業を冠し、農業系専門学科のみで構成されているのは、ここと杉戸農業の2校だけだ。

 場所は、公立高校関係者の方ならよくご存知のように熊谷高校のお隣である。道一本挟んでいるとは言え、県立高校2校が隣り合わせというのは、おそらくここだけだろう。

◆敷地は東京ドーム3個分
 生物生産技術科、生物生産工学科、食品科学科、生活技術科の4学科編成である。
 どの学科も実習が必須であるから、田んぼや畑、温室や牛舎などさまざまな施設が立ち並ぶ。
 とにかく広い。
 先生に、何かに例えるとどのくらいの広さになるかと尋ねたら、「東京ドーム3個かな。いや4個分ぐらいあるかも」という大雑把な答えが返って来た。
 「実習授業のときは生徒の移動も大変でしょう」と問うと、「遅れる子はいませんね。走ってでも間に合わせます」。みんな真面目なんだ。

◆校内に響く牛の鳴き声
 農業高校だから当たり前と言えば当たり前だが、敷地内を歩いていると、鶏や牛の鳴き声が聞こえてくる。
 牛は5頭いた。普段はもっといるが、新しい牛舎の建設に備え、仮牛舎なので何頭かはよそに預けているということだ。
 
 牛の世話をしていた生徒に聞くと、一人は(男子)は家が牧場だというが、もう一人は(女子)は普通のサラリーマン家庭の子だった。二人とも高校卒業後はさらに専門的に学びたいと言っていた。
 卒業後の進路は就職や専門学校が主だが、1割程度は大学に進学する。今年は帯広畜産大にも合格者が出たという。

◆ちょっと異色な生活技術科
 昨日は約2時間かけて全教科の実習授業を見て回ったが、ちょっと意外だったのは生活技術科だ。
 生活技術科には、「食と生活コース」、「子どもと福祉コース」の2コースがある。
 農業高校だから草花や野菜作りもするが、ここでは被服や保育・福祉について学ぶのだ。どちらかと言うと「家庭に関する学科」とか、「福祉に関する学科」に近いのではないか。
 農業高校になぜこのような学科があるのかを問うと、「おそらく昔は、農家のお嫁さんを育てる学校で、そうした流れから来ているのではないか」という答えだった。
 なるほど。明治35年(1902年)創立の伝統校であるから、そうした歴史を引き継いでいるのかもしれない。
 
 今年の入試(令和4年度入試)では、1学科だけ欠員補充をする結果となったが、例年どの学科も大きく定員割れすることはない。この学校でしか学べないことも多いとあって、生徒はかなり広範囲から集まってくるようだ。

 事前にホームページを隅々まで読み、予習十分で行ったつもりだが、やはり専門高校については、実際に現地に行き、生徒たちの様子を見てみないと分からないことが多い。
 動画も少し撮ってきたので、近々アップするつもりだ。