ビジネス用語に「クロージング」というのがある。
 企業で営業をやっている時によく聞かされた言葉だ。
 流行り廃りが激しく、新しい言葉が次々に浮かんでは消えて行くビジネス社会なので今でも使われているかどうかは分からない。  
 要は最終的に契約成立に持って行くことを言う。

 安価な商品であれば即決もあり得るが、高額な契約であるほど制約までに時間がかかり手間暇かかる。
 いつどのタイミングで「では、こちらにサインを」と切り出すか。
 早すぎても遅すぎてもいけない。
 ちょうど良い頃合というのがなかなか難しいわけである。
 優秀な営業マンとヘボな営業マンとの違いは、クロージングの上手さの違いと言ってもいい。

 さて、説明会や相談会もいよいよ大詰めを迎え、いよいよクロージングの時が到来した。

◆今は検討の時ではない
 岸田首相は、「検討使」などと言われている。
 検討、検討を繰り返すので「遣唐使」に引っかけて「検討使」。
 上手い言い方を考えたもんだと思うが、命がけの渡航であり、当時の超エリートたちが派遣されたものと一緒にしていいものなのか。最澄や空海に失礼だぞ。

 さて、ここから本題であるが、私はこの時期の個別相談などで「検討」という言葉を口にしてはいけないと考えている。
 「よく検討してみてくださいね」
 こんな言い方をする先生が時々いる。
 最終的に決めるのは受験生本人であり、それを後押しするのは保護者である。
 いろいろ調べて、とことん考えて、最後一本に絞る。
 その過程での相談であるから、たしかに「よく検討してみてくださいね」で良さそうなものだが、時期を考えてみなければいけない。

 受験生は決めなければならない時期を迎えているのである。
 もっと言えば、「決めるために」来ているのである。
 そういう生徒が多いのである。
 「調べるために」来ている夏休み頃との大きな違いである。

◆決めるための後押しをしてあげる
 これは個人的な体験であるが、買い物に行くとき、買う気100%で行く場合がある。
 とりあえず見に行くとかではなく、「今日は買おう」と心に決めて行く。
 そんな時、優秀な店員は「このお客、買う気だな」という雰囲気を察して、一気にクロージングに持って行こうとする(してくれる)。
 店員「AかBの二択しかないですね。Aでいいと思いますよ」
 私「そうだな。じゃあAでお願いします」
 これで契約成立。

 ところが、ヘボな店員はお客の雰囲気を察知できない。
 一緒になってああでもないこうでもないと悩み、挙句の果ては「ゆっくりご覧になってください」などと言い出す始末。
 いや、そうじゃないんだよ。
 検討するために来たんじゃなくて、買うために来たんだよ。
 こうなると最初の決心はどこへやら。
 急に気持ちもしぼんで、また今度にするかとなったりする。

 お客に決定を委ねるというのが基本ではあるのだろうが、ある時は、ポンと背中を一押ししてあげるのも客に対する親切というものだ。

 まだまだ検討中の相手に対し、無理にクロージングに持って行こうとするのは危険だ。
 だが、決めに来ている相手に曖昧な態度で接するのも大きな損失だ。
 ベテランの先生なら、そのあたりの呼吸は十分に心得ているわけだが、そうでない先生はみすみす機会を逃してしまうことになりかねない。
 そのあたりの間合いの取り方をしっかりご指導願いたい。
  
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 埼玉新聞社 高校受験ナビに掲載された高校の歴史を紐解くシリーズの第2回は、大正時代編。
 昨日はほぼ一日これに費やした。
 自分的には力作なので(ただ時間がかかっただけだが)、ここで紹介させてもらう。
【埼玉県公立高校の歴史を紐解く】第2回 大正時代創立編