本日のお題は、「県内私立高校、そろそろ『特進』やめようぜ」である。
 公立普通科の場合、普通科は単に普通科であって、入試段階でコースやクラス等を選ぶということはない。入学後、特に2年次以降に文理分けなどがあるにしても、募集としては普通科一択である。

 しかし、私立の場合、さまざまな理由(事情)があって、コースやクラスを細分化する。
 なぜか?
 埼玉県内私立は、公立に比べ、圧倒的に後発である。つまり歴史が浅い。このあたりが都内私立との大きな違いだ。
 そこで、公立王国とも言われた埼玉県で、どのようにして定位置を獲得していくかという難題に挑まなければならなかった。
 公立と同じことをやっていても勝てない。何か特色を出さなければならない。
 最初は、部活(スポーツ)強化に走った。
 それにより知名度を高め、募集につなげる。
 次いで大学進学で実績を残し、それを学校の売りにしようという動きが起こった。
 1978年(昭和53年)、埼玉栄の母体である佐藤栄学園が、大学進学に特化した学校を目指して、埼玉栄東高校(現在の栄東)を作ったのが、今の「進学の私立」の幕開けと言えるだろう。

 当時、公立高校教員だった私は、「私立が大学進学?って、そいつは無理だろう」と冷たい目で見ていた。
 が、結果は今皆さんが目にしている通りだ。
 佐藤栄太郎先生には50年先が見えていた。

 というような話は、別稿に譲るとして、特別進学(特進)の話である。
 私立が大学進学を売りにするために考案した特別進学(特進)というコース設定やネーミングも、そろそろ賞味期限切れではないかと、私自身、このところずっと考えてきた。

 特別進学(特進)はいかにも古い。
 就職者が一定数いた時代ならいざ知らず、入学者のほぼ全員が上級学校を目指す時代に、わざわざ進学と名乗る必要もあるまい。
 進学。
 特別進学(特進)。
 選抜進学。
 これらをコース名・クラス名からはずしてもいいだろう。

 現状を少し見てみよう。
 (コース名等はHP掲載されている募集要項による)
 
 まず、県内私立の両雄、栄東と開智はどうか。

 【栄東】
 東医クラス
 αクラス

 【開智】
 Tコース
 S1コース
 S2コース

 ここに(進学、特進、選抜)というワードはない。

 急成長を遂げた大宮開成はどうか。
 【大宮開成】
 特進選抜先進コース
 特進選抜Ⅰ類コース
 特進選抜Ⅱ類コース

 3コースとすっきりしているのはいいが、特進選抜はもはや不要だろう。
 先進、Ⅰ類、Ⅱ類で事足りる。

 かつての勢いが影を潜めたが、西武文理はどうか。
 【西武文理】
 普通科 グローバル選抜クラス
     グローバルクラス
     スペシャルアビリティクラス
 理数科 先端サイエンスクラス

 ここも(進学、特進、選抜)は卒業したようだ。

 他に、いくつか見てみよう。
 【淑徳与野】
 T類(難関国公立大学コース)
 SS類(難関理系大学コース)
 SA類(難関文系大学コース)
 R類(総合文理系大学コース)
 MS類(MSコース)
 
 一応、(進学、特進、選抜)からは卒業した模様。

 【狭山ヶ丘】
 Ⅰ類(難関国立進学コース)
 Ⅱ類(特別進学コース)
 Ⅲ類(総合進学コース)
 Ⅳ類(スポーツ・文化進学コース)

 「類」が一つの流行のようである。
 コース名称に進学の文字が残るが、(進学、特進、選抜)からの卒業間近といったところ。

 【埼玉栄】
 普通科 αコース
     Sコース
     特進コース
 保健体育科

 埼玉栄も卒業間近。α、Sと来て特進は不自然だから「T」とでも変えたらどうか。

 【浦和麗明】
 特選コースⅠ類
 特選コースⅡ類
 特選コースⅢ類
 特進コース

 「類」で行くなら、Ⅰ類からⅣ類でいいと思う。

 【栄北】
 特類選抜
 特類
 Ⅱ類
 Ⅰ類

 Ⅱ類とⅠ類の順序が逆のような気がするが、それはいいとして、「特類」の上だから「特類選抜」というのが、昔ながらのネーミングだ。Ⅰ類からⅣ類とか、特類選抜を特類S、特類を特類Tという手もある。

 【武南】
 特進コース
 選抜・進学コース 選抜コース
          進学コース

 3コースですっきりしているのはいいが、昔ながらのネーミングだ。

 【春日部共栄】
 選抜コース
 特進コースE系
 特進コースS系
 
 ここも3コースですっきりしているが、EとSを用いた以外は昔風。

 【本庄東】
 特進選抜コース
 特進コース
 進学コース
 
 ここも3コースなのはいいとして、昔よくあったパターン。

 私立には、公立に比べはるかに募集人員が多い学校がある。
 公立の最大サイズは伊奈学園を例外とすれば360人である。
 が、私立にはその1.5倍、2倍といった学校がある。
 そうした場合、学力レベル的にも上から下までかなり広範囲をカバーする必要があり、コースやクラスは多くなりがちだ。

 【浦和学院】
 国際類型  グローバル(国際)
 特進類型  T特
       S特
       特進  
 進学類型  文理選抜
       文理進学
       総合進学  
       アスリート選抜
       保健医療
       アート(美術)

 【浦和実業】
 普通科   特進選抜コース
       特進コース
       選抜αコース
       選抜コース
       進学コース
 商業科   プログレスコース
       キャリアアップコース

 【花咲徳栄】
 普通科 アルファコース  理数選抜クラス
              特別選抜クラス
              文理選抜クラス
     アドバンスコース 選抜進学クラス
              特別進学クラス
              総合進学クラス 
 食育実践科

 【昌平】
 IBコース
 特別進学コース T特選クラス
         特選クラス
         特選アスリートクラス
 選抜進学コース 選抜アスリートクラス
         選抜クラス

 【叡明】
 特進選抜コース Ⅰ類
         Ⅱ類
 特別進学コース Ⅰ類
         Ⅱ類
 進学コース   Ⅰ類
         Ⅱ類

 これらの学校もいずれは(進学、特進、選抜)から卒業し、もう少しすっきりした形になると思われるが、段階を経てということだろう。

 今回、時間の関係ですべての学校を取り上げることは出来なかったが、何となく傾向だけは見えてきたのではないか。