タイトルは大げさだが、それほど中身のある話ではない。
 昨日進学イベントの記事を書いたが、流れの中で書こうと思いつつ面倒になって止めた話だ。

 あちこちで行われる進学イベントは、ビジネスとして成り立っているのか。
 早い話、儲かっているのか。
 学校が単独で行うイベントや、複数の学校が協力して行うイベントは、最初から利益を狙っていないから、これらは最初から除外だ。
 そうではなく、民間企業が主催するイベントはビジネスとして成立しているか、だ。

 埼玉県内の学校関係者や塾関係者ならご存知と思うが、「彩の国進学フェア」というイベントがある。
 コロナ以前は毎年7月、さいたまスーパーアリーナを会場として行われていた。
 来場者は2日間で約6万人。
 主催者発表の来場者数はよく数字を盛るのだが、1か所しかない入口で専任スタッフがカウントしているので一の位まで正確な数字だ。

◆莫大な会場費
 このイベントの最大のネックは会場だ。
 会場の広さ、駅からの近さなどは問題ないのだが、会場費が高い。
 進学フェアではスタジアムモードという一番大きい借り方をするのだが、一日の使用料は700万円(税別)だ。
 2日間だからこれの2倍。
 それと前日の設営にも350万円(税別)かかる。
 で、ここまでは会場の借り賃で、別途空調費が1時間当たり10万円かかる。
 他に椅子やテーブルなどにもいちいち金がかかる。
 まあ、大規模なイベント会場はどこも同じなのだが、主催者には頭の痛い問題だ。
 (会場費等はスーパーアリーナの公式サイトに載っている)
 さいたまスーパーアリーナ 利用料金表

 そうそう、言い忘れたが「彩の国進学フェア」の主催者は読売新聞東京本社さいたま支局である。
 私は最初このプランを地元の埼玉新聞社に持ち込んだが、「公私合同の進学イベントなど出来るはずがない」と一蹴された。
 仕方ないので、部数順に読売、朝日、毎日、産経と頼みに行こうと思っていたら、最初の読売新聞で一発OKが出た。

 開催費用は会場費だけではない。
 イベントの肝は来場者数であるから集客を図らなければならない。
 幸い新聞社主催であるから自社媒体(要するに新聞)を使うことができる。
 にしても、ポスターやチラシを作り、中学校などに送らなければならない。

 それと人件費。
 実際の企画運営は関連会社である読売エージェンシーが担当しているわけだが全社員を動員しても足りない。
 なので当日は多数のアルバイトスタッフを雇う。
 (毎年やっている人も多く、士気が高いので感心している)
 なお、会場外の整理は警備会社に委託する。
 かれらは大人数の扱いに慣れている。
 社員だと言うことを聞いてくれないが、制服の力は大きいようだ。

◆協賛金と出展料で運営
 多額の開催費用をどのようにしてまかなうか。
 来場者からは1円も取らないイベントであるから、他の方法で費用をまかなう。

 当初は公立も私立も出展料は無料だった。
 私立はこの種のイベントに何十万円かの出展料を払って参加することに慣れているが、公立にとっては初めてのイベントであるし、金の出どころがない。
 まさか私立は有料、公立は無料というわけにもいかないから、結局どちらも無料ということで始まった。

 それをカバーするのが塾など協賛企業からの協賛金だ。
 広告宣伝のためのブースを設置し、出展料を払ってもらう仕組みだ。
 最初の頃、後援団体の一つである埼玉県教育委員会の偉い方が、「塾が目立ち過ぎる」とクレームを言ってきたが、学校からも来場者からも金をとらずにやる方法があるなら教えてほしいと思った。

◆利益は出るのか
 では、会場費・運営費などを、協賛金と出展料でまかなう方式で利益が出るのか。
 答えは出ない。
 出たとしても僅か。

 もっとも、このイベントは、イベント単体での利益は最初から見込んでいない。
 来場者から1000円でも2000円でも徴収すれば億単位の収入にはなるだろうが、民間企業の収益事業に公立が手を貸すという構造はまずい。
 公立が出なければ、「公私合同」というコンセプトが成立しない。
 というわけなので、現在では参加校から一定の費用負担はお願いしているが、利益優先の仕組みにはなっていない。
 
 協賛企業としては来場者の少ないイベントに出展しても広告効果が期待できないので、イベント規模が縮小すれば撤退するだろう。この点は、出展する(ブース参加する)学校とて同じことだ。
 一方、来場者(受験生や保護者)は出展する学校が少ないイベントには魅力を感じない。
 出展校の増加と、来場者の増加、この二つを両立しないと立ち行かなくなる。
 いくら新聞社の読者サービスとは言え、赤字を垂れ流してまで続ける意味はない。

 ここに、先生方の土日出勤はいいのかという働き方問題も加わってくるから余計難しくなる。
 平成の中ごろに始まったイベントも、令和スタイルへの転換が求められている。