専門高校取材が続く。
 今日は浦和商業だ。
 わが事務所から徒歩10分。
 たまにこのような近場の取材があると助かる。

 今回は「よみうり進学メディア」用の取材だが、昨年同時期に埼玉新聞関係の取材でも行っている。
 ということで、今日は浦和商業について語るわけだが、その前に埼玉県内商業高校の現状をざっと見ておこう。

◆県内の商業高校
 埼玉県には商業系学科のみの高校、いわゆる商業高校が8校ある。
 岩槻商業・浦和商業・大宮商業・熊谷商業・狭山経済・所沢商業・深谷商業・皆野。

 商業系がある学校となると、あと9校ある。
 上尾・鴻巣・鳩ケ谷・鳩山・八潮南・市立川越には普通科もある。
 越谷総合技術・新座総合技術・羽生実業には農業系・工業系・家庭系など他の専門学科もある。
 以上、まとめると、17校に29の商業系学科がある。

◆募集では苦戦が続く
 令和5年度入試の倍率を見てみよう。
 (志願先変更後の確定倍率である)

 商業系全体では0.91倍だ。工業系の0.87倍よりはやや高い。
 1.00倍を超えたのが10校11学科、定員を割ったのが11校18学科。

 1.00倍を超えたのは次の10校11学科である。
 上尾   商業   1.26
 所沢商業 情報処理 1.24
 市立川越 情報処理 1.16
 新座総合技術 総合ビジネス1.15
 浦和商業 情報処理 1.14
 鳩ヶ谷  情報処理 1.08
 八潮南  情報処理 1.08
 鴻巣   商業   1.05
 深谷商業 情報処理 1.05
 市立川越 国際経済 1.04
 熊谷商業 総合ビジネス1.02
 
◆情報処理科が人気
 商業系学科では、商業科よりも情報処理科に人気が集まっている。
 商業科は8校にあるが、1.00倍を超えたのは上尾、鴻巣の2校だけだった。両校は普通科の募集の方が多い学校だ。残り6校の商業科は1.00倍に達しなかった。

 一方、情報処理科は10校にあるが、岩槻商業(0.81)・越谷総合技術(0.85)・狭山経済(0.94)・羽生実業(0.68)以外の6校は1.00倍を超えている。

 商業系学科の人気は、商業科よりも情報処理科に集まっている。
 これは、工業系高校において、電気や機械よりも情報技術に人気が集まっていることと対をなしている。

◆浦和商業は、ほぼ定員を満たす
 以上を踏まえて、改めて浦和商業の5年度入試を振り返ってみる。
 入試募集人員は、商業科198人、情報処理科80人、計278人であった。(定員は280人だが転編入枠2人を設けているため)

 なお、280人定員(278人募集)というのは、商業高校としては深谷商業と並び最大規模である。裏を返せば、この2校だけが280人募集に耐えられそうな学校ということになる。
 240人、200人、160人と、どんどん規模を縮小している普通科も多い中、何とか踏みとどまっているのがこの2校で、浦和商業は、最終的には情報処理科からの第二志望合格もあって、合計278人募集のところ、276人入学で新年度のスタートを切っっている。

◆浦和商業の優位性
 浦和商業は、1927年(昭和2年)創立で、岩槻商業、熊谷商業、深谷商業(いずれも大正時代創立)に次ぐ歴史を誇る。開校当初は浦和町立(のちの浦和市、現在のさいたま市)であったが、1956年(昭和31年)に県立学校となった。
 間もなく100周年を迎える伝統校であり、文教都市・浦和の一角を占めるというところがまず第一の優位性。

 浦和駅からは徒歩15分から20分程度。武蔵野線・埼京線「武蔵浦和駅」からはもっと近く、15分とかからないだろう。不動産広告風に言えば、5線2駅利用可という好条件で、これも大きなアドバンテージだ。
 
◆実は進学校
 商業高校として、これはアピールポイントなのかどうか難しいところだが、浦和商業では就職者より上級学校進学者の割合が高い。

 直近の令和4年3月卒業生で見ると、進路状況は次のようになっている。
 民間就職 99人(36.9%)
 公務員   4人( 1.5%)
 大学   68人(25.4%)
 短大    7人( 2.6%)
 専門学校 84人(31.3%)
 その他   6人( 2.2%)

 以上のように大学短大進学者が28%、専門学校を含めた上級学校進学者が59.3%で、就職者の割合を上回っている。
 大学進学は当然ながら指定校推薦が多いわけだが、今年は指定校枠のない明治大学商学部に2人の合格者をだしている。これは明治大学が実施している商業高校対象の特別推薦枠だが、募集人数は25人と少なく、ハイレベルの資格を持っていないと合格は難しいと聞いている。

 進学者割合が高いのは、同校の進路指導の結果なのか。
 ということで、この春入学した1年生の進路希望状況データをもらったので、それを見てみた。
 就職希望  94人(34.1%)
 進学希望 182人(65.9%)
 どうやら、入学時点ですでに進学希望者の方が多いようだ。

 それが良いことなのかどうかは一概には言えないが、実態としてはすでに「商業高校=就職」ではなくなっているということだろう。

 同校の資格取得作戦や、ユニークな取り組みも多い課題研究にも触れたいところだが、明日も早朝からの取材になるので、このあたりで止めよう。

 なお、この学校は商業高校の中でも特に進路関係情報が充実しているので、詳細を知りたい方は同校ホームページで確認してもらいたい。
 「浦和商業 進路実績」