学校取材の行き帰りに読んだ本をご紹介。
 電車の場合、移動時間を読書タイムに充てられるのがいい。

 「高校生からのリーダーシップ入門」
 日向野幹也(ひがの・みきなり)著
 (ちくまプリマ―新書)

 近年はリーダー育成を目標に掲げる学校が多い。
 グローバルリーダーなどと威勢のいい言葉も聞かれる。
 むろんそれ自体は大変結構なことだ。

 ただ、リーダーとはそもそも何であり、リーダーシップとはどういうものなのか。
 そのあたりが私にはよく分からない。
 また、いかなる方法をもってすれば、リーダーやリーダーシップが育つのか。
 ここもまた分からない。

 そう思っている時に知人から紹介されたのがこの本だ。
 最初私は、どうせ大学教授が書いたものだから、浮世離れした理想論を語っているんだろうと舐めていた。
 大学教授にはそういう連中がわんさかいる。
 が、この本はちょっと、いや、だいぶ違っていた。
 授業や部活や学校行事に生かせそうなヒントが数多くあった。
 
 書名に「高校生からの」とあるように、読者対象は主に高校生や大学生と思われるが、まずは先生方に読んでもらいたい一冊だ。
 言い忘れたが、著者は現在、早稲田大学教授である。
 
 日向野先生は、これからの時代に必要なのは、「権限によらないリーダーシップ」であると述べられている。
 もちろん権限によるリーダーシップも時と場合によっては必要であり、それを否定するものではない。
 が、組織における課題解決のためには、「権限によらないリーダーシップ」という発想も必要で、その態度やスキルは誰もが身につけるべきなのだと述べられている。

 不肖私も、若き日の教員時代、クラスや部活で同じようなことを試みていたと思う。
 この場面では○○がリードする、また別の場面では○○が引っ張る。時と場合によってクルクルとリーダーが入れ替わる。そんな姿を自分の中の理想としていた。
 ただし若造が直感的にやっていただけなので、必ずしも成功していたとは言い難い。あの頃にこの本を読んでいたら、結果はもっと違ったものになっていただろう。残念。

 リーダーシップというものを、特別な能力を持った人や特別な地位にある人が発揮する力と限定すれば、リーダー育成の目標はそういった力を持たせたり、地位に就かせたりすることになる。
 であれば、クラスに1人とか学年に1人、そういう生徒が出現すれば十分で、残りのその他大勢は、黙って従うフォロワーのままでいい。
 はたして、学校が目指すリーダー育成は、そこなのだろうか。

 本の内容を詳しく紹介するのはルール違反になると思うので、一つだけ紹介しておこう。
 日向野先生は、リーダーシップに必要な要素として次の三つをあげておられる。
 1 目標共有
 2 率先垂範
 3 相互支援
 「率先垂範」はイメージしやすいが、「目標共有」や「相互支援」については、この本を読んで改めてその重要性に気づかされた。
 リーダーシップの態度やスキルを獲得するための手順、練習方法なども具体的で有難い。
 
 日向野先生は研究者なので論文や学術書も著されているはずだが、この本は新書なので初心者の入門書にはうってつけだと思う。