少し古いネタになってしまったが、東京都港区の中学校が、修学旅行の行き先を海外(シンガポール)にするというので話題になった。

 都内初 港区が区立中学校の修学旅行を海外に(9月6日 NHK)

 修学旅行は“シンガポール” 東京都内初! 港区の全公立中学校(9月4日 FNNプライムオンライン)

 まあ、いいんじゃないの。
 
 特に反対する理由はない。
 なぜなら港区の話であって、私は埼玉県民、さいたま市民だから。
 日本全国に1700以上の自治体があって、それぞれに教育委員会があって、大枠として法の縛りはあるものの、その範囲で独自の施策を実施している。
 さいたま市の住民が、税金を払っていない港区の施策に口を挟むことはできない。
 ただ、一般論としてどうなのかくらいは述べてもいいと思う。その程度のことだ。

 港区は大企業の本社がたくさんあり、裕福な自治体だ。
 しかし住民は少ないようで、公立中学校は10校で、修学旅行の対象となる中学3年生は760人だそうだ。
 たったの760人というのは驚きだ。
 私の住むさいたま市には中学校が58校あり、中学3年生は1万人いる。
 もっとも、港区のことだから、中学受験して国立私立の中学校に入る子の方が多く、そのせいで公立中学生が少ないのだろう
 
 生徒1人あたりの区の負担額は約50万円とある。
 50万×760=3億8000万円
 大きな金額ではあるが、港区ならどうということはない。

 これをもし、さいたま市でやろうとすると、
 50万円×1万人=50億円
 という大変な金額になる。
 比較的豊かなさいたま市であっても、これはきつい。
 50億あったら、他にやるべきことがあるだろうという話になりそうだ。
 ちなみに港区の一般会計予算は1633億円、さいたま市は6690億円である。

 港区としては、国立私立への流出を少しでも食い止めたいという思惑があるのだろう。
 そのため、公立中学校の魅力づくりの一環として海外修学旅行を考えたものと思われる。

 感性豊かな若いうちに異文化体験させること自体は悪くない。
 僅か3泊5日であっても得るものはあるだろう。
 ただし、これが対国立私立中学校の決定打になるかと言えば、そこは疑問だ。
 教育的な意味があると考えられ、かつ港区の場合は財政状況が許すので実施するということでいいだろう。

 この議論の中で当然出て来ると思われるのが、はたして修学旅行なるものが今日必要かという話である。
 手を変え品を変えさまざま工夫しているが、所詮修学旅行なる宿泊付き団体行動は、個人の旅行など夢であった戦後の貧しい時代の名残りだろう。
 個人でも、家族でも、自由に旅行できる時代になったのだから、学校が請け負う必要はあるまい。
 それでも、どうしても思い出作りがしたいというのであれば、行き先は国内で十分だ。
 生徒にとってみんなとお泊りするのが楽しいのであって、行き先など二の次だろう(と、年寄り的には思う)。