さいたま市の教員採用に関するニュース。
 大学3年生から教員採用試験を受けられるようにする。

教員試験、大学3年生で受験可に さいたま市、24年度から導入へ 志願者数は過去最多で右肩上がり、理由は(9月26日 埼玉新聞)

 同じような内容の記事が10日前にも出ている。
 こちらは埼玉県の教員採用に関するものだ。
教員不足に打開策?埼玉の採用試験、大学3年生も受験可に 全志願区分で実施 受験機会増、人材流出防止も(9月16日 埼玉新聞)

 どちらも、受験可能時期を前倒しするというもの。

 こうした施策が、教員不足解消の決定打になるか。
 答えは非常に難しいのだが、とりあえず「ならない」としておこう。
 教員不足の根本的な理由は、試験時期などを含む採用制度ではないからだ。
 せいぜい、それも理由の一つと考えられる、という程度だ。

 中高や大学の入試で、試験日を変えたり、入試科目を変えたりと、入試制度を変えることによって一時的に志願者が増えることがある。
 だが、効果があったと分かれば、他の学校が追随し、横並びに戻る。
 そこで先駆者は、さらに試験日を早め、入試科目を減らす。
 しかし、これもまたすぐに追随される。
 この繰り返しで、試験日は限りなく早期化し、内容的にも簡略化され、容易なものになり、入試制度そのものの根幹を揺るがす事態になる。
 そこで、ある段階まで行くと、協定が結ばれ、一定の歯止めをかけようという動きが始まる。

 ということで、大学3年生から受験可能にしたところで、何の解決にもならないわけだが、東京や千葉そのような制度をとるならば、さしあたり横には並んでおかなければならない。
 小さくなったパイの分捕り合戦に過ぎないと分かってはいるが、このレースに参加しなければ状況はますます悪化する。辛いところだ。

 免許は要りません。
 ペーパーでも構いません。
 実習は後からでもいいです。
 一次試験は免除します。

 特別な訓練は不要です。
 誰でもなれます。
 簡単になれます

 こうして、どんどん教員になるためのハードルを下げているのが今の流れだ。
 一時的に志願者を増やすことに成功したとしても、これでは教員の社会的地位を下げることにしかならない。

 教員は大儲けできる仕事ではない。
 だが、専門性が求められる職業であり、誰もがそう易々と出来るような仕事ではない。
 重要な職業であり、尊敬される職業である。
 そう思い、そう思われることで何とかバランスが保たれる。

 まあ埼玉県教委にしても、さいたま市教委にしても、受験資格の緩和や試験の早期化が応急処置に過ぎないことは百も承知であろう。
 
 優れた教員により、良い教育が行われれば、社会はその果実を享受できる。
 反対に、劣った教員により、悪い教育が行われれば、社会はそのツケ(代償)を払うことになる。

 大した力にはならないが、学校を、先生を、応援しようと思う。