かつてはそんな制度もありましたね。
 そう懐かしく思い出されるのが埼玉県公立高校入試における学区制度。

 これが廃止されたのが平成16年度(2004)入試から。
 今回行われるのが令和6年度(2024)入試であるから、ちょうど20年前となる。
 もちろん今年の受験生にとって生まれるずっと前の話である。
 先生方の方も、35歳以下であれば学区制を経験していないことになる。

 これにより学校の人気や評価、序列や偏差値と、いろんなものに変化が現れたのは皆さんご存知の通りである。
 さてそこで、本日は懐かしの学区制度により学校を分類し、その現在がどうなっているかを見てみよう。
 やってみないと分からないが、何か気づきがあるかもしれない。

 専門学科は以前から全県一区であったから、調べたのは普通科のみである。
 倍率については、今期第1回進路希望調査(10月1日現在)を採用した。

【第1通学区南部】
浦和   1.36
浦和一女 1.21
浦和西  2.08
浦和北  1.49
浦和東  1.65
川口   1.68
川口北  1.40
川口東  1.02
川口青陵 1.12
与野   1.38
蕨    1.92
南稜   1.59
鳩ヶ谷  1.51
大宮   2.01
大宮武蔵野0.79
大宮東  0.98
大宮南  1.21
大宮光陵 1.32
市立浦和 2.82
浦和南  1.77
大宮北  1.69
川口市立 2.48
 
【第1通学区北部】
鴻巣   1.39
鴻巣女子 0.99
上尾   2.11
上尾南  0.92
上尾鷹の台0.93
上尾橘  0.41
桶川   0.84
桶川西  0.38
北本   0.54
伊奈学園 1.37

【第2通学区東部】
朝霞   1.26
朝霞西  1.37
志木   1.32
新座   0.66
和光国際 1.78

【第2通学区中部】
川越   1.49
川越女子 1.21
川越南  2.05
川越西  0.88
川越初雁 0.61
所沢   1.89
所沢北  1.48
所沢西  1.42
所沢中央 1.11
狭山清陵 0.95
富士見  0.69
ふじみ野 0.70
坂戸   1.29
坂戸西  1.17
越生   0.72
日高   0.69
鶴ヶ島清風0.50
市立川越 3.79

【第2通学区西部】
飯能   0.73
豊岡   1.40
入間向陽 1.32

【第3通学区】
松山   0.78
松山女子 0.91
小川   0.84

【第4通学区】
秩父   0.94

【第5通学区】
本庄   1.31
児玉   0.68

【第6通学区】
熊谷   0.86
熊谷女子 0.75
熊谷西  1.68
深谷第一 1.31
深谷   0.86
妻沼   0.56

【第7通学区】
不動岡  1.36
羽生第一 0.92

【第8通学区南部】
草加   1.05
草加南  1.33
草加東  1.38
草加西  0.88
越ケ谷  1.96
越谷北  1.41
越谷南  2.06
越谷西  1.31
越谷東  0.90
八潮南  1.35
三郷   0.63
三郷北  1.11
松伏   1.16

【第8通学区北部】
春日部  1.18
春日部女子1.11
春日部東 1.02
岩槻   1.18
久喜   0.87
蓮田松韻 0.42
白岡   0.66
宮代   0.65
栗橋北彩 0.53
鷲宮   1.16
杉戸   1.17
庄和   1.09

 学区撤廃により、県中央部及び南部への受験生集中が起こったと考えられている。
 特に人気校が多いのは、旧第1学区南部(さいたま市・川口市・蕨市・戸田市)である。

 学区制のあった時代でも共通通学地域というのがあり、旧第2通学区東部(朝霞市・志木市・和光市・新座市)、旧第8通学区南部(草加市・越谷市など)、旧第8通学区北部(春日部市・久喜市など)からは、第1通学区南部の学校に通うことはできた。したがって、これらの地域においては、学区撤廃により県中央部及び南部への流出が始まったとは言えない。ただ、交通網の発達により流れが加速したというのはあるだろう。

 学区撤廃により、これまで旧第1通学区南部に通えなかった旧第3から旧第7までの地域は大きな影響を受けただろう。
 特に学力上位層の流出が痛手だ。
 学力上位層や、明確な目的意識を持った生徒ほど、多少の不便は厭わないであろうから、そういう生徒から順番に県中央部及び南部にやって来る。

 地域の人口減少と、成績上位層の流出というダブルパンチを食らっているのが、旧第3から第7までの地域だ。
 と言って、今さら学区制復活でもあるまい。
 わざわざ遠くまで行く必要はないと思わせるだけの集客力(魅力づくり)を強化できるかどうかだ。

 なお今回、私立高校の急成長という重要な因子は無視している。
 そのあたりは別の稿に譲ろうと思う。