埼玉県教育委員会が「県立高校の特色化に向けたアンケート」を実施する。
 担当するのは、魅力ある高校づくり課。

 まずはこちらのサイトをご覧いただこう。

https://www.pref.saitama.lg.jp/f2219/miryokutyousa.html

 目的は、今後の県立高校の特色化について検討する際の参考とするためである。
 アンケート対象は、県内の小学5・6年生、中学生及び高校生とその保護者である。
 期間は、令和5年12月19日(火)から令和6年1月26日(金)までである。

 主な質問項目は、
 高校でどのようなことを学びたいか、
 高校生活を通してどのような力を身に付けたいか、
 どのような高校で学びたいか、
 高校を選ぶ際にどのようなことを重視するか、
 などである。
 なお、児童生徒、保護者など対象者ごとに質問項目や質問の仕方などが多少異なっている。

◆今なぜアンケート?
 県立高校の特色化は、魅力ある学校づくり課及び県立各校が長年取り組んできた課題である。
 今もそれぞれの学校が努力されている。
 そんな中での突然のアンケート。

 質問内容は、「そんなこと今さら聞くか」というものばかりなのだが、ちょっと目を引いたのは、共学・別学に関する質問だ。
 学校を選ぶにあたり、共学校であることを重視したかしなかったか、別学校であることを重視したかしなかったかなどが含まれている。

 さてはこの質問のためのアンケート?
 というのは考え過ぎだが、今後の方針を定めるにあたり、この問題は避けて通れないということなのだろう。
 たった一人の苦情とは言え苦情処理委員様が動いた以上、とりあえず県民の皆さんの意見をお聞きしましたという体は必要なのだろう。

◆アンケートで分かれば苦労はない
 魅力ある学校を目指すのは大いに結構。
 すべての学校、すべての先生がそう考えている。
 ただし、そのための方策をお客に尋ねても答えは出ない。

 そりゃあそうだろう。
 アンケートで答えが出るなら、今頃みんな大成功している。
 もちろん、この種のアンケートが全く無意味とは思わないが、その効果はきわめて限定的だ。
 方針、方策を定める上での裏付け(根拠)に利用できるかもしれない。その程度だ。

 一例として企業が新商品・新サービスを開発・販売する場面を想定してみよう。
 ではアンケートを、となる。
 しかし、お客は答えを持っている可能性はあるが、持っていたとしても、その答えに自分でも正しく気づいていないことが多い。
 だから、「どんな商品、サービスが欲しいですか」と尋ねても、善意の誤答しか得られない。
 その通りの商品やサービスを提供したら大失敗に終わる。

 提供側が頭をひねり試行錯誤し、「こんな商品、サービスはいかがですか」と恐る恐る世に出してみたら、「そうそう、こういうの待っていたの、欲しかったの」となる。
 だったらはじめから言えよ、なのだが、本人気づいてないのだから仕方ない。

 アンケートは迅速かつ安あがりに大量のデータを収集することが可能だが、さまざまなバイアスがかかるので、その分析には慎重さが必要だ。
 今回のアンケートでも、どう思うかを聞いているが、どう思うかと実際にどう行動するかはまったく別次元の問題だ。
 われわれはしばしば、思いとは別の行動を取るものなのだ。