今のところ特に強い関心を持っているわけではないが、一つのネタとして提供しておこう。
 12月22日(金)、母校の同窓会から一通のメールが入ってきた。
 表題は「『埼玉県立高校女子校・男子校の 共学化に反対します!』の署名運動が始まりました」というもの。
 署名に協力してくれというわけだ。

 忙しいのでとりあえずそのままにしていたら、今日になって埼玉新聞が記事で取り上げていた。

 「反対…男女別学の埼玉県立高校“共学化”しないで 浦和高校の在校生、保護者、卒業生ら反対オンライン署名活動を開始 「別学」8校、「共学」3校の有志らも参画 メリット・デメリット検証、広く対話へ「共学・別学の共存は多様性の象徴」
 
 その前に朝日新聞も取り上げている。
 県立高校共学化に反対、ネット署名活動開始 浦和高関係者らが立ち上げ
 
 事の発端は「埼玉県男女共同参画苦情処理委員」に寄せられた1件の苦情だ。
 「埼玉県立の男子高校が女子が女子であることを理由に入学を拒んでいる。女子の入学は当然認めるべきであり、女子差別撤廃条約に違反している事態は是正されるべきである」
 これが苦情の内容。

 なお、「埼玉県男女共同参画苦情処理委員」は、埼玉県男女共同参画推進条例に基づいて設置された期間で、知事から委嘱された3名の委員で構成されている。
 3名の委員とは、武田万里子委員(大学教授)、前園進也委員(弁護士)、柴﨑薫委員(弁護士)。
 なお、武田万里子委員は女子大の名門・津田塾大学の教授である。
 また、柴崎薫弁護士は浦和一女出身であり、前園進也弁護士は新座高校出身(中退)である。

 苦情処理委員は、必要な調査を行い、必要があると認めるときは、県の機関や関係者に対し助言、意見表明、勧告等を行うことができる。
 そこで今年8月、苦情処理委員は埼玉県教育委員会教育長に宛てに、次のような勧告を行った。

 男女共同参画苦情処理委員よりの勧告
 
 A4サイズで10~12ページほどなので、未読の方は年末年始休みにでも、一度お読みになるといいだろう。
 「男子校に女子の入学を認めろ」という、たった1件の苦情をよくぞここまでの勧告にまとめたものだと感心する出来栄えだ。
 年間に1、2件しか苦情を取り上げていないので、十分な時間があったのかもしれない。

 勧告では「共学化が早期に実現されるべきである」と結論づけている。
 勧告の趣旨は次のとおりである。
 「男女別学」は女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約上、男女別学であることだけでは条約違反とはされていないものの「男女共学」での教育が奨励されており、男女の役割についての定型化された概念の撤廃が求められている。埼玉県立高校の男女別学校における管理職や教職員の格差における問題が浮き彫りになっていることは明らかであり、別紙で提言した施策がなされるとともに、埼玉県立高校において、共学化が早期に実現されるべきである」
 また、令和6年8月31日までに是正その他の措置について報告するように求めている。

 知事から委嘱された苦情処理委員は、勧告し、報告を求めることはできるが、政策立案に直接関与することはできない。
 実際の政策立案は教育委員会を中心に行われ、最終的には議会によって決定される。
 仮に別学校をすべて共学化するとして、それには条例改正が必要であるし、予算措置も必要で、県民から選ばれた議会の仕事となる。

 今般始まった署名活動により、苦情処理委員の勧告が覆されることはない。
 だが、世論の盛り上がりをもって今後の県の政策に影響を与えることはできるだろう。

 この件に関しては、平成13年度にも同様の勧告がなされているが、県教委は「県民の強い支持があるため早期に共学化を実現するという結論には至らなかった」と報告している。
 その際も署名運動が盛り上がった。
 今回も同様の経過をたどる可能性が高い。