一昨日は某私立高校で次期募集用制作物に関するキックオフ会議を行ってきた。
 募集用制作物とはパンフレット・ポスター・チラシなどである。
 ホームページやユーチューブやSNSなどさまざまなメディアが発達しても、紙媒体には一定の需要がある。

 まだ今シーズンの本番試験が始まってもいないのに、なぜ次期のキックオフが必要なのか。
 それは早期の完成、納品が求められるからだ。
 早期とは、早ければ5月連休前、遅くとも5月いっぱいである。
 制作期間はなんだかんだで2~3か月はかかる。
 そこから逆算すれば、できれば1月中、それが無理でも2月中にはスタートを切っておきたい。

◆新年度募集は新パンフレットで
 最近は徐々に減りつつあるが、1学期中のイベントや説明会に行くと、前年度版のパンフレットを渡されることがある。
 ふざけるな、なんて失礼な、と思う。
 前年度版は食品でいうなら賞味期限切れ(消費期限切れ)だ。
 廃棄だ。ゴミだ。
 大事なお客様にゴミを配るとはどういう神経なのだ。

 たしかに参考にはなるだろう。
 しかし参考に渡したのだから、お客の方だって参考程度にしか見てくれない。
 誰がそんなもの本気で見るか。

 本気で学校を好きになってもらいたかったら、「あなた方のために作った新品」を渡すべきだ。
 前年版はゴミ、は言い過ぎにしても、余り物、残り物、中古品ではないか。
 そんなものを渡してファンになってくれとは虫が良すぎるぞ。

 というのが私の基本的な考え方なので、夏休み前くらいまでに作ってくれればいいという顧客無視の学校の仕事は受けないことにしている。

◆次の募集はすでに始まっている
 今年度中に早くも次の募集に動き出している学校の話は以前にも書いた。
 大宮春日部川越女子熊谷女子などが2月~3月に現1・2年生向け説明会を予定している。

 募集活動を行える期間を4月から12月までの9か月間と想定してみる。
 1月まで延ばしても10か月間だ。
 もう少し長くというなら、先には延ばせないので、前年度の2月、3月ということになる。

 いずれにしても丸1年に満たない短期決戦である。

 そんな短期決戦の中、出だしの3か月(4月~6月)イコール全体の3分の1に当たる期間、まったく活動せず、のんびりとパンフレット作りに勤しんでいる学校がある。
 パンフレットは募集活動のための重要ツール、いわば武器である。
 戦いが始まっているというのに、まだ武器を整えているような状態では勝ち目はない。

 その点からもパンフレットやポスターなどの早期完成が求められるのである。

◆公立の仕事から撤退
 もし私が、募集で苦戦している公立学校から協力してほしいと頼まれたらという話をしてみよう。
 実際にはない話だ。

 かつては公立のパンフレットも多数制作してきた。
 昔は公費(県費)50万円まで認められ、私費(学校独自予算)でそれと同額以上を追加することも可能だった。
 また事実上の随意契約が可能だった。
 だが、その後、見積もり金額のみの完全競争入札となった。
 これ自体は税金の使い方という点では正しいやり方だ。

 ただその結果、内容関係なく1円でも安く出した会社が落札するようになった。
 細部にわたり完全にスペックが同じであれば、競争入札でいいが、パンフレットは内容(クリエイティブ)が重要で、誰が作っても同じにはならない。
 アイディア、デザイン、ノウハウに左右されるものは競争入札には適さない。少なくとも相性は良くない。

 私がかつて公立の仕事を取るにあたり、セールス文句にしたのは、「印刷会社やデザイン会社は納品したらお仕事完了」だが、私の場合「納品してからが本当のお仕事」というものだった。
 募集活動の最初から最後まで伴走し、成功を収めるお手伝いをする。
 必要があれば納品後も何度だって学校を訪ねる。求められれば助言もする。
 それも含めての金額提示であるから、とてもじゃないが30万だ40万だという金額では受けられない。
 儲からないのは我慢できるが赤字は出せない。
 というわけで、公立の仕事からは撤退した。
   
 以後、制作関係の仕事は私立のみとなっている。
 私立も広義の公教育を担う存在であり、公費も投入されているから不明朗な会計は許されないが、募集に投ずる予算規模が違う。
 だから、こちらはビジネスとして成立する可能性が高い。
 ただ、「納品してからが本番」という考えなので、募集面で明らかに競合する学校の仕事は同時には受けられない。
 これは商業道徳というか信義の問題だ。
 そんなわけで、こちらもそう多くの学校から仕事をいただけるわけではない。