ほぼ一日を蕨高校で過ごした。
 午前は「よみうり進学メディア埼玉版10月号:進路指導特集」のための取材と授業見学。
 午後はアントレプレナーシップ教育ワークショップの見学。

 同校の進路指導・進学実績について、詳しくは別記事で取り上げようと思うが、今回同校を取材対象とした理由を簡単に紹介しておこう。

◆2年連続国公立100人超え
 2024年春の大学入試では国公立102人(うち現役93人)を記録した。
 国公立3ケタ合格は、県南部地区では浦和・浦和一女・大宮・市立浦和の4校。
 これに次ぐのが蕨で、しばしば比較される浦和西(国公立56人、うち現役51人)とはほぼダブルスコアで大きく引き離している。
 国公立合格者だけで見れば、県内公立トップ10に入る実力校。
 これが今回の取材動機である。

 ただ、難関10大学(旧帝+東工一橋・神戸)の合格者は10人にとどかない。
 また、医・医を目指す生徒も少ない。
 国公立希望者が多いこともあってか早慶上理も思いのほか少ない(早慶上理67人)
 このあたりを学校としてどのように分析し評価しているのか。そのあたりを知りたい。
 これも取材動機の一つであった。
 
 結論だけ言えば、学校としてもこの点は今後の課題と認識しており、さまざまな施策を講じているとのことだった。

 では、後半の話題。

◆蕨を起点に全県に拡大
 今日行われたアントレプレナーシップ教育プログラム。
 蕨高校を会場としているが、県教育委員会主導であるようだ。
 県教育委員会関係者のほか、県内各校の先生方(他校の先生方)も大勢参加していた。
 どうやら今日の集まりは先生方向け研修会という意味もあるようだ。
 県議会議員2名も出席していた。

 今回のプログラムは早稲田大学の島岡未来子(みきこ)教授との連携で行われた。
 島岡先生は起業家教育や非営利組織経営などを主な研究テーマとされている(早稲田大学研究者データベースより)。
 
 プログラムの実施にあたり、蕨高校の先生方は事前研修を受けている。
 つまり島岡先生が開発した授業手法をあらかじめ学んでいるわけだ。
 その後各先生は自分なりのアレンジを加えるなどして今日の授業(対象は1年生)に臨んだ。

 参加した他校の先生方には、それを自校に持ち帰り研究を進めることが期待されているのだろう。
 
 私の理解では、今日の蕨高校での実践は、ある意味実験台だ、テストケースだ。
 どこかの学校で実際にやってみて、その可能性を探り、併せてそれを他校の先生方にも見てもらうことによって全県的な拡大をねらう。

◆商業高校での可能性
 私はこのプログラムに触れるのは今日が初めてだが、直感的には商業高校や商業科の授業との相性も良いのではないかと思った。
 商業高校や商業科の授業はこれまでも見てきたが、結構これに近いことは行われている印象だ。
 ただ、教える先生方の独自手法に頼っている。
 別にそれが悪いとは思わないが、一つの手法として今日のようなプログラムを学んでいただくのもいいだろう。

 アントレプレナーシップ教育は起業家教育ともいわれるが、必ずしも起業家そのものの育成を目的としているわけではない。
 このことは最近のブログでも書いた。
 今の日本は、産業構造はもちろんのこと、雇用環境も大きく変化している。
 そんな中、起業家にはならないにしても、起業家に求められるような資質や態度を多くの人が、いわば社会人基礎力のような形で身に付けることは、本人だけでなく社会全体にとっても有益だと思う。

◆ノリも良く理解も早い蕨高生
 先生方も初挑戦なら生徒も初挑戦というのが今日のプログラムだったが、舞台に蕨高校を選んだのは大正解。
 なぜならこの学校、「Wの挑戦」を旗印にしている。
 先生方も生徒も、新しいチャレンジに尻込みするような学校ではない。

 生徒たちは求められていることを瞬時に理解する。
 そして、何よりもノリが良い。
 悪ノリではなく、楽しみながらも真剣にその世界に没入できる。