大学入試は専門外であるが、それなりに話題になっているようなので取り上げておこう。
 こちらのニュース。

「東洋大と大東文化大に入試期日順守を指導…11~12月に学力テスト実施で文科省「要項に反する」」(讀賣新聞オンライン 12月16日)

 東洋大学が2025年度入試から新しい入試制度を導入した。
 「学校推薦入試・基礎学力テスト型」というものだ。
 詳しい内容は同大学サイトへ。

「2025年度入試から併願可能な学校推薦型選抜が始まります」(東洋大学WEBサイト)

 ポイントはいくつかあるが、(1)2教科(英国または英数)の学科試験があること、(2)他大学や、東洋大学の一般選抜との併願が可能であること、などが特徴的と言えるだろう。
 しかし、文部科学省が各大学に通知している入試実施要項では、2月1日以前に学力試験を伴う入試を行ってはならないとしている。
 そこで今回の指導となった。
 ルール違反だと言うのである。

 それにしても、なぜ今なのだ。
 試験は12月1日に2万人の受験者を集め実施されており、同10日には合格発表となっている(東洋大学の場合、以下同じ)。
 終わってから言っても遅いだろう。
 もっとも記事によれば、文部科学省は10月中旬に学長を呼びルールを順守するよう指導という。
 が、それだって遅すぎる。
 この試験の出願は11月1日からだった。
 10月中旬に「ルールを守れ」と言ったって対応できるはずないだろう。
 仮に大学が文部科学省の指導に従ったとして、今度は受験生が迷惑する。

 これまた記事によれば、文部科学省は「要項に反しており、遺憾だ」と述べているという。
 はっ?
 その程度か。

 これはどうも本気ではないな。
 本気で止めるならもっと早く待ったをかけないと。
 それに関西の大学、たとえば近畿大学とかは普通に学力検査つきの推薦入試をやっている。
 そっちも止めないと。

 この流れ、つまり年内入試中心の大学入試という流れはもう止めようのないところまで来ているのではないか。
 すでに一般入試の割合は50%を下回っており、さらに増える勢いだ。
 大学入試の主戦場が年内になってくれば、面接や志望理由書や調査書だけでなく、学力試験も課そうじゃないかとなるのは当然である。
 学力試験がだめなら適性検査と称して事実上の学力試験をやればいいわけだし。

 早慶やMARCHなどの有力私大はまだ一般入試が成立するだろうが、日東駒専や大東亜帝国あたりになると一般入試だけではもたなくなる。
 関東では東洋が先陣を切ったが追随する大学が出てくるだろう。
 そうじゃないと東洋の一人勝ちになってしまう。
 さて、そうなると困るのがそれ以下の下位大学、俗に言うFラン大学だ。
 そこそこ歴史があって、知名度もそれないという中堅大学に年内入試で根こそぎ持って行かれる。
 文部科学省の黙認政策はもしやFラン潰しではないかと勘繰りたくもなる。
 
 大学入試は専門外であるが、こうした流れは高校にも及ぶだろうと考える。
 根っこにあるのは少子化である。
 少ないお客を取り込もうとしたら誰もが思いつくのは選抜の早期化だ。
 現に文部科学省だって教員確保のために採用試験の早期化を促しているではないか。

 というわけで、試験期日そのものを早めるのは大きな混乱につながるので難しいが、少なくとも募集活動は早期化したほうがいいよ、といういつもの結論に落ち着くわけである。