令和3年度の「全国学力・学習状況調査」の結果が発表された。新聞・テレビ等の報道は、スペース(字数・行数)や尺(放送時間)の制約もあり、内容的に十分とは言えない。
教育関係者の皆さんは、ここは面倒だが元のデータをじっくり当たってもらうしかない。
結果の概要はコチラ。
「令和3年度全国学力・学習状況調査の結果」
概要なので大した量ではないが、それでもA4で23ページほどある。
構成は次のとおり。
1 教科に関する調査結果
2 質問紙調査結果
何度も書いているが、個人的には「2質問紙調査結果」に注目している。
今回の注目点は、「ICTを活用した学習状況」、「新型コロナウイルス感染症の影響による学校の臨時休業と児童生徒の学習状況・学校の取組」であろう。
◆ICTの活用
ICTに関して次のような質問があった。
【学校質問紙】前年度に、教員が大型提示装置(プロジェクター、電子黒板など)などのICT機器を活用した授業を1クラス当たりどの程度行いましたか。
選択肢は「ほぼ毎日」「週1回以上」「月1回以上」「月1回未満」「その他・無回答」の5つである。
なお、調査日が5月27日なので前年度について聞いている。
結果、「ほぼ毎日」と回答した割合が、小学校で53.9%、中学校で58.6%であった。
前回調査(平成31年)では、小学校で37.1%、中学校で43.6%であったから、プロジェクター等を使った授業はかなり増えてきた。
以上は学校(先生)に対する質問なので、児童生徒側を見てみよう。
【児童生徒質問紙】前年度までに受けた授業で、コンピュータなどのICT機器をどの程度使用しましたか。
選択肢は上記と同じだ。
結果、「ほぼ毎日」と回答した割合が、小学校で11.4%、中学校で7.9%であった。
前回調査(平成31年)では、小学校で10.4%、中学校で7.2%であったから、児童生徒自らがコンピュータ等を使う活動はそれほど伸びていない。
ただし、コロナの影響を受けたGIGAスクール構想の前倒しにより、端末の配布が行われたのが令和2年度末という点を考慮すれば、調査時点で利用が進んでいないのはやむを得ないところだ。
公立小中学校については、端末は行き渡ったのであるから、次回調査でこの数字がどれだけ伸びるかに注目しておこう。
今回、次のような新たな質問が設けられた。
【学校質問紙】コンピュータなどのICT機器の活用に関して、学校に十分な知識をもった専門スタッフ(教員は除く)がいるなど技術的にサポートできる体制
選択肢は、「ある」「どちらかと言えば、ある」「どちらかと言えば、ない」「ない」「その他・無回答」である。
結果、「ある」と「どちらかと言えば、ある」とした割合の合計は、小学校で53.9%、中学校で52.2%であった。
「ない」は小学校で22.1%、中学校で24.3%であった。
端末を配布しておしまいではなく、研修の機会を増やしたり、サポート体制を整備することが急務である。
◆臨時休校期間中の学習
臨時休校の期間については、10日未満を最小、90日以上を最大として、10日刻みで聞いている。
結果、小中学校とも、もっとも多かったのは「50日以上、60日未満」であった。
10日未満や90日以上という回答も少なからずあるのが、ちょっとした驚きだ。
臨時休業期間中の家庭学習の内容として「教科書に基づく学習内容の指示」や「学校作成のプリント等の配布」とした回答が小中学校ともに80%以上あった。
一方、「学校作成の学習動画等を活用した学習」は約15%、「同時双方向型オンライン指導を通じた学習」は約5%にとどまった。
保護者から、学校からプリントが配られただけという不安や不満の声が聞かれたが、1年前の状況では仕方ない。
今年2学期は分散登校、短縮授業という形で始まった学校が多いが、今回はプリントを配っただけとならないことを期待しよう。
以上、ほんの一部を紹介したが、じっくり時間をかけて読めば、さまざまな気づきがあるので、一読をお勧めする。
もちろん私も少しずつ読み、新たな発見があったら報告するつもりだ。
なお、フルの報告書はコチラで見られる。
「国立教育研究所のサイト」
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