本日は埼玉県高校入試、第2回進路希望状況調査に関する続報である。
 元データはこちらのページへ。
 令和4年3月中学校等卒業予定者の進路希望状況調査(令和3年12月15日現在)

 なお、昨日このブログに書いた進路希望調査に関する記事は、「埼玉新聞社 高校受験ナビ」にも掲載されている。ただし、こちらは発行元が埼玉新聞社であり、対象も中学生であるから、多少遠慮した言い方になっている。

 では、本日は専門学科、総合学科の動向だ。

◆専門学科は上昇、総合学科は下降
 全日制専門学科全体の倍率は0.93倍で、前年同期の0.91倍をやや上回った。
 これは予想がはずれた。
 理数や外国語はともかく、農業・工業・商業など伝統的専門学科は軒並み前年同期を下回るのではないかと予想していたが、意外にもこれらが皆、前年より上がっていたのである。
 
 全日制総合学科全体の倍率は0.92倍で、前年同期の0.96倍を下回った。
 これはまあ、予想の範囲内だ。
 では、学科系統別に見て行こう。

◆理数に関する学科
 カッコ内は前年同期倍率(以下、同じ)
 理数に関する学科は7校7学科あるが、すべての学校・学科が1.00倍を超えている。
 全体倍率は1.54倍で、前年同期の1.50倍を上回っている。
01 大宮・理数    2.28(2.18)
02 川口市立・理数  1.75(1.80)
03 所沢北・理数   1.73(1.33)
04 越谷北・理数   1.63(1.28)
05 大宮北・理数   1.20(1.83)
06 松山・理数    1.18(1.15)
07 熊谷西・理数   1.03(0.93)
 前年同期との比較では、所沢北越谷北が大きく倍率を上げている。
 逆に、大宮北は大きく下げた。普通科の方も、前年同期の1.70倍から今回1.43倍と下がっている。前年の反動ということもあるが、4年度から学校選択問題採用校となったので、その影響も大きいだろう。これまで、越谷北だけが傾斜配点(数学と理科を2倍)を実施してこなかったが、大宮北も傾斜配点を実施しない道を選んだ。「すべての教科をバランスよく学ばせたい」ということなんだろうが、じゃあ何のための理数科かということになる。授業の半分以上は数学と理科という学科なのだから、傾斜配点を行い、理数に強い生徒を取った方がいいと思う。

 理数科希望の生徒は、第2希望で普通科に拾われることを期待して、そのまま突っ走る傾向が強い。大宮などは特にその傾向が顕著だ。ただし、理数科がダメだった者がすべて普通科で拾われるわけではない。
 このことは、昨年3月、本ブログで取り上げている。
 「2021埼玉県公立入試 理数科から普通科への第二希望合格者数」

◆外国語に関する学科
 外国語に関する学科は、今年度から不動岡が募集停止になったので、7校7学科となった。全体の倍率は1.06倍で、前年同期の1.02倍を上回った。
01 和光国際・外国語 1.76(1.06)
02 坂戸・外国語   1.03(0.60)
03 春日部女子・外国語1.00(1.28)
 1.00倍を超えたのは上記3校で、越谷南草加南南稜は1.00倍に達していない。
 和光国際にとって外国語科は看板学科であるから、ここだけは2クラス(80人)募集だ。前年同期は1.06倍の低倍率であり、ほぼそのまま本番を迎えることになった。今回はその反動だろう。
 坂戸も前年はまさかの欠員募集だったので、その反動だろう。が、現時点でこの倍率だと、前年の二の舞になりかねない。
 不動岡の募集停止で、外国語科狙いの女子が春日部女子に流れる可能性もあったが、今回の数字を見る限り、そのような動きは出ていないようだ。では、不動岡・普通科が吸収できているかというと、それもないようだ。外国語科狙いの生徒は何処へ? と言うか、そういう生徒がもはや激減したということだろう。

◆農業に関する学科
 農業に関する学科は6校18学科あり、全体倍率は0.93倍で、前年同期の0.91倍を上回った。
01 杉戸農業・生物生産技術 1.60(1.65)
02 熊谷農業・生活技術 1.28(1.25)
03 熊谷農業・食品科学 1.20(0.80)
03 鳩ヶ谷・園芸デザイン1.20(1.00)
05 杉戸農業・園芸   1.18 (0.80 )
 上記のほか、熊谷農業・生物生産工学、杉戸農業・食品流通、秩父農工科学・農業の3校3学科が1.00倍を超えている。
 学校名にズバリ「農業」が付くのは熊谷農業杉戸農業の2校だけで、他の4校は普通科や他の専門学科(工業や商業)が併設になっている。1.00倍を超えている8学科のうち、熊谷農業と杉戸農業が6学科を占めている。やはり「農業一筋」というところが強いのか。

◆工業に関する学科
 工業に関する学科は14校49学科あり、全体倍率は0.93倍で、前年同期の0.90倍を上回った。
01 川越工業・建築   1.73(1.38)
02 越谷総合技術・情報技術1.65(1.75)
03 川越工業・デザイン 1.63(1.80)
04 熊谷工業・情報技術 1.50(1.33)
05 川越工業・機械   1.43(1.27)
06 川越工業・電気   1.33(1.33)
06 進修館・情報メディア1.33(1.75)
08 三郷工業技術・情報技術1.28(0.68)
08 三郷工業技術・情報電子1.28(0.70)
10 新座総合技術・デザイン1.23(0.85)
 上記を含め11校19学科で1.00倍を超えているが、0.5~0.6倍の学科も多い。
 歴史の古い川越工業は、化学科を除き、5学科中4学科で1.00倍を超えており、工業高校では一番の人気校となっている。
 情報技術科は6校にあるが、いずれも1.00倍を超えている。時代にもっともマッチした学科ということだろう。
 学校名に「工業」を冠する学校は、浦和工業大宮工業春日部工業川口工業川越工業久喜工業熊谷工業狭山工業と8校ある。三郷工業技術も加えれば9校だ。これら9校にかならずあるのが「機械科」と「電気科」であるが、「機械科」は5校が1.00倍超えを果たしているのに対し、「電気科」の1.00倍超えは川越工業のみである。やはり時代は電気から電子ということか。

◆商業に関する学科
 商業に関する学科は17校29学科(系含む)あり、全体倍率は0.85倍で、前年同期の0.80倍を上回った。
 農業・工業の0.93倍に比べ、商業の0.85倍はかなり低い。
01 市立川越・国際経済 1.46(1.51)
01 市立川越・情報処理 1.46(1.11)
03 深谷商業・情報処理 1.23(1.06)
04 鳩ヶ谷・情報処理  1.15(0.75)
05 深谷商業・商業   1.11(1.06)
06 浦和商業・情報処理 1.00(1.41)
06 狭山経済・流通経済 1.00(0.82)
06 深谷商業・会計   1.00(0.75)
 伝統校・深谷商業は3学科すべてで1.00倍を超えている。
 普通科人気校でもある市立川越は、ここでも人気で、他を圧倒する倍率を示している。最近の生徒は知らないようだが、この学校は元は川越商業である。商業に強くて当然だ。
 情報処理科は10校にあるが、うち4校が1.00倍を超え、3校が0.95倍を超えている。工業系で情報技術に人気が集まっているのに呼応して、商業系では情報処理に人気が集まっていると言えそうだ。

◆家庭に関する学科
 家庭に関する学科は4校8学科ある。全体倍率は0.94倍で、前年同期の1.03倍を下回った。
01 新座総合技術・食物調理1.28(1.23)
02 越谷総合技術・食物調理1.10(1.65)
03 新座総合技術・服飾デザイン1.03(1.05)
 1.00倍を超えているのは上記の2校3学科のみだ。ただ、0.90倍以上も3学科あるので、それほど大きな落ち込みというわけではない。
 デザインや食物には一定のニーズがありそうだが、鴻巣女子・保育がやや厳しい。将来的に幼児教育や保育に進みたいという生徒は少なくないが、結局のところ、大学・短大や専門学校に行かないと資格は取れない。高校段階から保育を学ぶ意義は何なのか。ここを強力にアピールできないと今後も厳しい状況は続きそうだ。

◆その他の専門学科をまとめて
 ここからは、1校ないし2~3校にしかない専門学科についてだ。

 看護に関する学科は常盤のみ。倍率は1.36倍で、前年同期の1.29倍を上回った。看護のニーズは高いのでここは引き続き堅調だ。

 美術に関する学科は3校3学科ある。倍率は1.23倍で、前年同期の1.25倍をやや下回っている。大宮光陵越生芸術総合3校はいずれも1.00倍を超えている。

 音楽に関する学科は3校3学科ある。倍率は0.53倍で、前年同期の0.58倍をやや下回っている。偶然だが、大宮光陵芸術総合松伏の3校3学科は、いずれも志願者21人、倍率0.53倍である。美術は堅調だが、音楽の落ち込みが激しい。

 書道に関する学科は大宮光陵のみ。倍率は0.55倍で、前年同期の0.68倍を下回っている。

 体育に関する学科は2校2学科ある。倍率は1.01倍で、前年同期の0.96倍を上回っている。大宮東・体育は1.10倍だが、ふじみ野・スポーツサイエンスは0.91倍にとどまっている。部活狙いの生徒が多いと思われるが、スポーツ強化を目指す私立との競合が激しく、安定した高倍率は望めない。

 福祉に関する学科は誠和福祉のみ。倍率は0.50倍で、前年同期の0.76倍を下回っている。福祉に対する社会的イメージが悪いため、なかなか厳しい状況に置かれている。卒業生の就職先での評価は高いのに残念なことだ。

 人文に関する学科は春日部東のみ。倍率は0.38倍で、前年同期と同じ。
 国際文化に関する学科は岩槻のみ。倍率は0.63倍で、前年同期の0.65倍をやや下回っている。
 映像芸術に関する学科は芸術総合のみ。倍率は1.50倍で、前年同期の1.20倍を上回っている。
 舞台芸術に関する学科は芸術総合のみ。倍率は0.83倍で、前年同期と同じ。
 生物・環境に関する系は、「いずみ」のみ。倍率は1.04倍で前年同期の1.02倍をやや上回っている。生物系が1.17倍、環境系が0.92倍だ。

◆総合学科
 総合学科は9校9学科あり、全体倍率は0.92倍で、前年同期の0.96倍を下回っている。
01 川越総合・総合 1.38(1.59)
02 久喜北陽・総合 1.03(0.95)
03 寄居城北・総合 1.00(1.00)
 1.00倍を超えているのは上記3校のみだ。
 総合学科は各校の募集人員に大きな差がある。もっとも規模が大きいのは320人定員の久喜北陽、次いで280人の滑川総合、240人の川越総合、200人の幸手桜進修館寄居城北、120人の小鹿野吉川美南と続き、もっとも小さいのは80人の誠和福祉だ。
  
 久喜北陽は、同市内の久喜(普通科・女子・280人定員)が1.00倍なのに対し、それより多い定員で1.03倍を維持している。
 川越総合は、前身が川越農業であったことから、農業に重点を置いた教育を行っている。市立川越や川越南など人気校の多い川越市内で確実に倍率を維持しているのは、はっきりした特色を打ち出しているからだろう。
 
 以上、本日は専門学科、総合学科の動向であった。
 気になるのは、今後の倍率推移であるが、これはデータ整理に少し時間を要するので、来週の課題とさせてもらおう。