埼玉県内私立高校を2校訪問(取材)。 
 午前は埼玉栄高校の第1回学校説明会。
 午後は花咲徳栄高校の文化祭。

 まず埼玉栄の説明会について書く。
 (花咲徳栄文化祭は次回)

 6月は塾や教育関係者を対象とする説明会が多いが、今日のは受験生・保護者が対象である。
 いわゆる塾説はプロ向けの話で、それはそれで収穫は多い。
 だが最近は、各学校が受験生や保護者に対し、どのようにアピールしているかに興味があり、もっぱらそちらを見に行くようにしている。

 今日の説明会は予約制で100組限定だ。
 当日欠はおそらく5組程度だったと思われる。

◆早い時期の参加者は出願率が高い
 今シーズン、既に説明会を実施している学校もあるが、6月第2週の説明会開催は、かなり早い部類に入るだろう。
 申込は約1か月前であるから、今日の参加者は連休明けにはアクションを起こしているわけである。
 いつまで経っても行動を起こさない受験生も多い中、受験に対する意識が高い層と考えていい。

 また、今日の説明会に参加したということは、すでにこの学校が候補校の一つになっているということだ。
 参加者は、意識が高く、アクティブな層であるから、今後も積極的に活動するだろう。
 だが、最初に受けた印象は強烈だ。
 かなりの高確率で、実際の出願に結び付くと考えられる。

◆前半戦は質、後半戦は量
 埼玉栄は定員割れの心配がない人気校である。
 こうした学校に早期に説明会を開催されると、知名度に劣る学校は戦いづらい。
 そこで、前半の戦いは回避し、後半、もっと言えば終盤に勝負をかけようという学校が出てくる。
 定員割れが常態化している学校ほど、そのような戦い方になる。

 だが、そのような戦術を取っているうちは現状を打破することはできない。
 たとえ多くの集客が見込めなくても、前半の戦いを回避すべきではない。

 前半の戦いは、「質」を取りに行く戦いである。

 「質」にはさまざまな意味合いがある。
 最たるものは学力であるが、それは後半の戦いにおいて獲得することも可能だ。
 A校志望の生徒がB校に下げてくれれば、B校としては、より高い学力の生徒を獲得できることになる。
 また私立の場合なら、公立D校志望の生徒がC校に上げてくれれば、いわゆる「併願の戻り率」が高まる可能性がある。
 いずれにしても、こうした動きは受験戦線の後半から終盤にかけて起きる現象である。
 よって「質=学力」と考えた場合、主戦場は後半から終盤にかけてである。

◆合格を赤飯で祝う生徒がほしい
 「質」にはもう一つの意味があると考える。

 たとえば、よく言われる目的意識がはっきりとした生徒。
 受験戦術(合格戦術)として選んだのではなく、目的で選んだ生徒。
 これもまた「質」の高い生徒である。
 部活が目的でもいいし、兄姉が行っているでもいい。
 父母、祖父母の母校でもいい。

 私はこれらを「合格を赤飯炊いて祝う生徒」と呼んでいる。
 一番行きたかった学校に合格し、親戚中が集まって、「良かった、良かった」と祝福する。
 かれらは、いわば即戦力であり、教室でリーダーシップを発揮し、授業や行事で雰囲気を作ってくれる。
 学校側としては、学力の高い生徒にも入って欲しいが、こうした「赤飯組」も一定数欲しい。

 「赤飯組」の獲得に向いているのは前半の戦いである。
 どうせ、今やっても集まらない。
 いや、それでいいのだ。
 集まるのは10人でもいい。何ならもっと少なくてもいい。
 だが、その中に「赤飯組」がいるかもしれないのだ。
 未来のリーダーがいるかもしれないのだ。

 定員割れが常態化しているのに、同じような時期に同じような説明会を繰り返している。
 これではいつまで経っても現状打破できない。

◆5G基地局設置し、教育DXに取り組む
 今日の埼玉栄の説明は、およそ50分で終了した。
 ちょうどいい時間だ。
 説明に立ったのは校長先生と募集広報責任者の先生。
 校長が教育方針と学校の現状及び将来像を語り、募集広報責任者が学校の特色を訴える。
 
 学校によっては、入れ代わり立ち代わり何人もの先生が登場するが、せいぜい3人までだろう。
 あまり多いと、誰が何の話をしたか記憶に残らない。

 説明の後は、校内施設見学が行われた。
 施設設備はこの学校のストロングポイントであるから、これをはずす手はない。

 埼玉栄は今秋、学校内に5G基地局を設置する。
 県内の高校では初めてではないか。
 めざすは「教育DX」の推進であろう。

 参考までにDX(デジタル・トランスフォーメーション)については3月に記事を書いた。
 「企業で流行の『DX』が教育界にも入り込んで来ているようだ」

 中学生には難しいので、今日はこの言葉は出なかったが、説明の端々に目指す方向性が垣間見えた。