NECが機能強化したテスト採点支援ソフトの販売を開始したというニュース。
 いくつかのメディアが取り上げている。
 記事内容はNECが発信したプレスリリースをそのままコピーしたようなものばかりだ。
 なので、本家本元のNECのサイトを見てみる。

 ソフトの概要はコチラ。
 テスト採点支援ソリューション

 メディア向けニュースリリースはコチラ。
 NEC、テスト採点支援ソフトウェアの機能強化と導入代行サービスの新規提供により、教員の校務効率化を支援 ~教員のテスト採点後の指導を支援する機能を追加した新バージョンを提供~

 テスト採点ソフトそのものは別に目新しいものではない。
 テスト屋さん業界では、記述(手書き)採点も含めてすでに実用化されている。

 なので、教育DXとか働き方改革と結びつけたところに新しさがあるのではないか。
 現にNECサイトでも、このソフトを「働き方改革」というメニューの中で紹介している。

 でも、それってどうなんだろう。
 先生の業務の中で、テスト採点って、そんなに大変なものなのか。
 先生方は、ここだけは何とかして欲しいと切望しているのだろうか。

 むしろ、これは今のままでもいいから、他の業務を何とかして欲しい。
 余計な業務を減らして欲しい。
 それで浮いた時間を、もっと採点に回してもいい。
 そう考えているのではないか。

 定期考査などのテスト採点は、成績評価につながるものである。
 が、同時に、先生自身の授業振り返りの機会でもある。
 採点していると、「ここは強調したはずなんだがな。伝わってなかったか」などと己の授業を反省することはしばしばだ。
 つまり、生徒を採点していると同時に、己の授業を自己採点している。
 この反省が次からの授業に生かされる。

 また、「よく出来た」「完璧」「惜しい」「もう一息」などと、ちょっとしたコメントを付けてやれば、生徒のモチベーションも上がるだろう。
 答案用紙は、コミュニケーションツールでもあるのだ。

 だから、採点を効率化することで先生の働き方を改革しましょうというのは、ちょっと違うのではないか。
 合理化、効率化、デジタル化を進めるのはここではない。
 ここは時間をかけてもいいところだ。
 その他の業務を効率化したり、無くしたりすることで時間を生み出し、それを問題作成や採点に回したほうがいい。
 とまあ、自分の経験も含めて、そう考えるわけである。

 ただ、データを集計し、蓄積し、分析することは大事だ。
 そこから思わぬ発見もあるだろう。
 見落としていた生徒の傾向が見えてくるかもしれない。
 己の指導の弱点もより明らかになるかもしれない。

 要は使いようである。
 昔ながらの赤ペンに固執することもあるまい。
 私が現役だったら、ちょっと試してみるかとなる可能性が高い。

 だが、働き方改革への寄与はあまり期待できない。
 今は何でも「働き方改革」とか「SDGs」とか言えば通ってしまう世の中だが、本当の目的や意義はどこにあるのかをよく考えたほうがいい。