小学4年生が数学検定1級に合格し、最年少記録更新。昨年、小学5年生が合格し、最年少記録が更新されたばかりだが、あっさりと抜かれた。これはつまり、数検というのは子供でも合格できる試験だということだ。幅広い教養や豊富な社会経験は不要で、ある特定分野の専門知識に特化した試験だからであろう。

 と言って、少年の合格にケチをつけようというのではない。よその子であっても、我が子のことのように嬉しいし、目いっぱい祝福してあげたい気分だ。
 もっと外で遊んだほうがいいとか、友達を作ったほうがいいとか、他の勉強もやったほうがいいとか、いろいろ言う人もいるだろうが、そんなことは親が一番考えているから心配するな。

 この子がガウスとかオイラー(それしか知らない)のような天才数学者になるかどうかは分からないが、努力の天才であることは間違いないので、この才能をもっと伸ばしてあげたい。だが今の日本に、ある分野に特別な興味を持ち、自ら進んで努力できる子を、さらに伸ばしてあげられるシステムがあるのかどうか。無いとしたら、どういうシステムを作ればいいのか。大人が考えるべきはそこのところだ。

 と、偉そうに言っているが、情けないことに私はそれに対する明確な答えを持ち合わせていない。ただ、例えばこの少年にとって、中学校や高校の数学の授業がとてつもなく退屈なものであろうことは想像できる。本人にとってもったいない時間の使い方であるばかりでなく、社会全体としても大きな損失だというところまでは分かる。

 力の劣った子を、そこそこの水準まで引き上げてやることについては、学校はよくやっている。しかし、力があり余っている子をもっと伸ばしてやることについては、研究も足りないし、システム設計も環境整備も進んでいない。
 平等や公平を常に最上位に持って来なければならない公立というシステムがもっとも苦手としている領域であると思われるので、ここは私立や民間教育に期待したいところである。