正月三日の恒例行事、谷中七福神巡りに行ってきた。今年で13回目。何となく始めたが、ここまで来ると何かそれらしい理由をつけないと止められない。
 始めるときに理由がないのに、終わらせるのに理由が必要というのはおかしなものだが、日常生活でも仕事の上でも結構このようなことは多いのである。

 継続には意味があるが、何かを捨てなければ、新しい何かを手に入れることはできない。やめることは、すなわち新しい何かを始めることである。来年も続けるべきか、新しい何かを始めるべきか。悩ましいところだ。

 同行者がおみくじで凶を引いた。「正月から何てことだ」と落胆していたが、確率の低い凶を引き当てたのは考えようによっては強運だ。
 おみくじの起源は元三大師による「元三大師籤」だそうだが昔から3割程度は凶だったという話も伝わっている。
 なお、元三大師は慈恵大師とも呼ばれるが、本名は良源。第18代天台座主(てんだいざす=天台宗の最高位)である。関西では単に大師と言えば弘法大師のことだが、関東で大師と言った場合、元三大師を指すことも多いようである。

 近年のおみくじでは凶は1割程度という話もあるが、正確なところは分からない。大吉・中吉・小吉など吉が出る確率よりも低いのは確かなようだ。前述のように低い確率を引き当てたのは強運であるし、本日只今の運気が凶であるということは、今が最低でこの先運気は上がる一方である。その点、大吉は今がピークでこれからは下降線をたどるのだから、凶もまた良しである。いつか大凶を引いてみたいものだ。

 七福神は一般的には、恵比寿、大黒天、福禄寿、毘沙門天、布袋、寿老人、弁財天である。それぞれのルーツを辿れば、福禄寿・寿老人・布袋が中国、大黒天・毘沙門天・弁財天がインド。弁財天が紅一点。恵比寿が唯一日本由来の神である。

 七福神めぐりでは、寺社が混在するのが普通だが、谷中七福神は全部お寺。私の贔屓は日暮里・天王寺(てんのうじ=天台宗の寺院)にある毘沙門天である。持国天、増長天、広目天と並び四天王と称されるが、その場合は名前を変えて多聞天と呼ばれる。
 神社仏閣好きな私は、ついついこのような蘊蓄を傾けたくなるが、同行者たちは「今日、お昼何にする」と、まるで興味がないようだ。まあ社会科見学じゃないからそれでいいか。
                中央が毘沙門天(日暮里・天王寺にて)