埼玉県私立高校の塾説(塾の先生対象の説明会)が続々と延期になっている。学校がようやく通常登校に戻れるかどうかという状態であるから止むを得ないだろう。

 昨日もまた、某私立中高から案内が来ていた。例年7月実施を9月に延期する旨の連絡だ。
 それはいいのだが、中にこのようなことが書かれていた。
 「なお、合格の目安となる基準に関しましては、現在検討中であります。今後、中学校かから出される成績や業者の会場テストの実施状況等を踏まえて決める必要があるため、例年より決定が遅くなることが見込まれます」

 7月に実施する学校もあるが、それらの学校は入試について具体的な発表があるのだろう。まさか、人を呼んでおいて「未定です」ということはあるまい。
 だが、この学校は、7月にお呼びしても、はっきりしたことは申し上げられません。せっかくお越しいただいても、それでは失礼に当たるので9月まで待ってください。
 そのように言っているわけだから、ある意味、良心的とも言える。

 だが、それにしても。
 業者テストの日程や方法が定まらないと自校の入試について何も決められないというのはあまりにも悲しいではないか。
 本来、業者テストの側が本物の入試に合わせるものだが、埼玉では立場が逆転している。この現実を打破しない限り、埼玉私立のステイタス(社会的地位)が公立を上回ることはない。
 私は県内の公立を出て、県内の公立で教鞭を執った者であるが、県全体の発展を考えた場合、せめてイーブン(対等)の関係であるべきだと思っている。
 それを見届けるまで現役続行だ。

 ところで。
 今度の入試について言えば、「安心」が一つのキーワードになると考えている。
 受験生・保護者は少しでも早く「安心」を得たい。いつだってそうなのだが、先行きが不透明なだけに今回は特にその傾向が強まると予想する。

 これまで、良くも悪くも「安心して受けていいですよ」というのが私立の、いわば売りであったわけだ。だから、こういう時こそ、いつもより早めにこれを言ってあげたい。
 公立の出題範囲決定が、例年より1か月遅れ、選抜基準発表も約2か月遅れになることが分かっている。
 現状を鑑みれば止むを得ない面もあるが、受験生の不安な心理を慮れば一日でも早い方がいいわけである。

 それを、公立がまだだから、業者テストがまだだから、と言っているようでは、本社や親会社の方針が決まらないと動けない支店や子会社と変わらないではないか。
 各校秘策を練っているところと思うが、いち早く受験生・保護者に「安心」を届けるべく、なお一層の努力を望むものである。

 「安心」のためには小まめな情報発信が必要だ。知らせたい情報より、知りたい情報を
 たとえば、「令和3年度募集要項、決定次第お知らせします」みたいなやつ。これって、何か伝えてます?
 決定しなきゃ発表出来ないのは当たり前で、受験生が知りたいのは、「じゃあ、いつ決定して発表するのよ?」ってことでしょう。

 そう言えば、コロナ禍で困ったのは、「当面の間休業します」というやつだった。店側には自分たちなりの「当面の間」のイメージはあるはずなんだが、こっちにはさっぱり分からない。
 学校側にもさまざまな事情があるのは承知しているが、受け取る側の身になった情報発信を求めたい。