公立高校入試目前だというのに今日はそれとはまったく関係ないわいせつの話をするわけである。
間違ってはいけない。わいせつな話ではなくわいせつの話である。
昨年12月22日、文部科学省は2019年度にわいせつ行為やセクハラで処分された公立小中高校等の教員が273人いたと発表した。
詳細なデータは文部科学省のサイトで見ることができるが、ホント詳細だよ。
表題にもあるように、人事行政調査というものだから、女性管理職の割合だとか、病気休職している教員の数とか、さまざまなことを調べている。
別にわいせつについてだけ調べているわけではない。
ただマスコミ的にはわいせつが最も読者の興味をひきやすいため、そこに狙いを定める。
「わいせつ教員の懲戒処分273人 半数が児童に対して」(朝日新聞)
と、こんな感じになる。
わいせつ教員という言い方が実に上手い。
厳密にはわいせつ行為等で処分を受けた教員なのだが、縮めてわいせつ教員とするといやらしさや不届きな印象が倍加する。
273人という数が多いのか少ないのかということだが、公立小中高校教員等は全国に約86万5千人(平成28年度学校教員統計調査)いるから、その0.03%とそれほど高い割合ではない。
むろん、だから問題ないと言いたいわけではない。当たり前だろう。
◆わいせつ行為とは
文部科学省では、「わいせつ行為等」を「わいせつ行為」及び「セクシャルハラスメント」だと定義している。
等の中にセクハラも入るということだ。
このうち「わいせつ行為」とは次のような行為を指す。
▼強制性交等
▼強制わいせつ
▼公然わいせつ
▼わいせつ物頒布等
▼買春、痴漢、のぞき
▼陰部等の露出
▼青少年保護条例等違反
▼不適切な裸体・下着姿等の撮影(隠し撮り等を含む)
▼わいせつ目的をもって体に触ること等
いやあ、一口にわいせつ行為というが、ずいぶんあるものだ。
で、先ほどの273人は、「わいせつ行為等」で懲戒処分を受けた教員の数である。
「わいせつ行為」だけに絞ると174人。
さらにそのうち児童生徒に対するものに絞ると126人となる。
まあこのあたりは新聞の見出しでも「半数が児童に対して」とあって、その通りだ。
◆20代が最多で63人
わいせつ行為で懲戒処分を受けたのは20代が最も多い。
174人の内訳は次のとおりだ。
20代 63人
30代 55人
40代 30人
50代 26人
若い教員ほど多いというのは想像しやすいところだ。
◆高校の先生が最多
次に、わいせつ行為で懲戒処分を受けた教員が属する学校種だ。
小学校 50人(0.01%)
中学校 57人(0.02%)
高校 55人(0.03%)
人数的には中学校の教員が一番多いわけだが、それぞれの学校種の在職者数に対する割合で見ると、小学校、中学校、高校の順に高くなる。
◆7割近くが勤務時間外
わいせつ行為等がどんな場面で行われたか。
今度はわいせつ行為等(273人)で見て行く。
勤務時間外 186人(68.1%)
放課後 23人(8.4%)
授業中 20人(7.3%)
授業中というのは驚くが、主に「わいせつ行為等」の中の「セクシャルハラスメント」や、「わいせつ行為」の中の「体に触る」だと考えられる。まさか授業中に強制性交はないだろう。アダルトビデオじゃあるまいし。
ただ、盗撮はあるかもしれない。
多くが勤務時間外となると、学校側の管理も難しく、ここが悩ましいところだ。校内であれば防ぐ手立てはある程度考えられるが、プライベートでは手の出しようがない。
わいせつ行為が行われた場所は次のとおりだ。
その他 98人
ホテル 37人
教室 29人
保健室・生徒指導室等 28人
自宅 25人
自動車内 24人
ほぼ想像できる範囲であるが「その他」とはどこなのか。気になるところである。
◆相手は自校の児童・生徒
わいせつ行為の相手の属性は次のとおりだ。
自校の児童・生徒 76人(児童19人、生徒57人)
18歳未満の者 43人
その他 39人
18歳未満の者というのが、いわゆる「SNSなどで知り合って」というやつだ。
わいせつ行為の相手が自校の児童・生徒というところが由々しき問題だ。
◆「体に触る」がもっとも多い
最後に「わいせつ行為等」の態様である。
体に触る 84人
性交 49人
盗撮・のぞき 33人
「体を触る」というのは、先生側からすれば微妙なところだ。
しかし、今回の調査は懲戒というもっとも重い処分を受けた教員についてだから、「わいせつ目的」が明白だったのだろう。
まとめて言うと「20代の高校の先生が、勤務時間外に、ホテルで、自校の生徒を相手に、性交する」という、大変危険な状況が見えてくるわけである。
両者の年齢を考えれば、あり得ないことではないが、そこを踏みとどまるのが教員というものだ。
最後に、ここまでの話の元になったデータを紹介しておこう。
わいせつ処分等に係る懲戒処分等の状況
本ブログの読者には教職員を指導・監督する立場の方が多かろう。
新聞・テレビの報道だけでは冷静な判断ができず、有効な対策を打ち出すことはできないだろう。
時間のある時に、ぜひ元データを当たっていただきたい。
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