中央教育審議会、より正確には中央教育審議会初等中等育分科会教員養成部会というところで教員免許更新制度を見直す議論が進んでいるようである。
 もちろん廃止の方向で。
 萩生田文科大臣が3月、抜本的な見直しを求めており、それに答える形で議論が行われている。

 免許更新制は、第1次安倍政権の時、「教育再生会議」などの提言を受け2009年度に導入された。
 大学などで2年間で30時間以上の講習を受け、それにより免許を更新する。
 費用は自己負担で、たぶん3万円から4万円程度だと思うが、自分で受けたわけではないので詳しくは分からない。

 私は当時すでに教職を離れていたが、自分の免許がどうなるかを知るため文部科学省に問い合わせた。
 同省の回答は、「年齢的に制度の対象外なので更新は必要ありません。免許はそのまま有効です」とのことだった。
 そうか。A級ライセンスならぬ永久ライセンスか。
 まあ、今や使い道もないからどうでもいいが。 

 結局、講座を開設した大学はちょっとは儲かったかもしれないが、夏休みなどを使って講習を受けるので教員の負担は増えた。
 また、更新時期を誤った教員が「うっかり失効」し、可哀そうに失職するケースもみられた。
 無免許状態の教員が行った授業は単位として認められないんだよね。
 児童生徒にも被害は及んだ。

 最初から意義目的がはっきりしない制度だった。
 一方で、授業も担任も経験したことのない無免許の民間人を校長に取り立てておきながら、現職の免許だけ期限付きってどう考えても変だ。
 
 およそ10年続けて、何か良いことあったかな?
 全然思いつかない。
 ということは続ける理由が見つからない。

 ただ、行政の文化というものがある。
 行政に失敗は許されないのだ。
 民間企業だったらPDCAサイクルを回していけばいいのだが、行政の場合、失敗するかもしれないがとりあえずやってみようとはならない。
 おそらく世間もそれは認めないだろう。

 失敗が許されないということは、失敗を認められないことでもある。
 そこで、制度を設計した時点と現在とでは社会情勢が変わったとか、当時は予想不可能だった事態が生じたとか、制度そのものを完全否定せず廃止する理屈を考えているところだろう。

 講習を受けないと免許を取り上げるぞ。
 これでは本気で研修に取り組む気にはならない。

 免許とは切り離し、受講は任意とする。
 受けても受けなくてもいい。
 ただし、自腹切って講習受けても、それによって給料が僅かでも上がって、取り返せる仕組みだったら、ちょっとはやる気が出たかもしれない。

 それよりも何よりも時間だ。
 お金は我慢してもいいから時間くれ。

 先生になるぐらいだから基本的に学校は好き。
 勉強も嫌いじゃない。
 学ぶ意欲は十分にある。
 意欲がないように見えるとしたら、それは意欲を奪った結果だと思うよ。
 そこを勘違いするから、免許更新制みたいな訳の分からない政策になる。