さいたま市立大宮北高校を訪問した。塾関係の皆さんであれば、学校選択問題採用について関心があると思う。
 が、今回はICT教育先進校として新聞に取り上げるための取材である。

◆学校選択問題採用への経緯
 とは言え、学校選択問題採用について完全スルーというわけにもいかない。
 ちょっとは話を聞いてきたので、まずはそこから。

 同校は、学校選択問題を採用していない学校の中では最上位にランクされる。
 令和3年度入試でも、理数科は2.27倍、普通科は1.32倍の高倍率を記録した。
 SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校でもある。

 よって、次に学校選択問題を採用するとしたらここしかないと誰もが思ったはずだ。

 ここ数年、学力検査問題は易しくなっている。
 特に数学でこの傾向が顕著なので、理数科のあるこの学校の場合、満点やそれに近い得点が続出しているとみられる。
 要するに学力検査問題では差がつかない。
 つくとすれば、ちょっとしたミス(ケアレスミス)があるかないかだけ。
 となれば、実力差が現れる問題で選抜したいと考えるのは当然のことだ。

 2年前、春日部女子が見栄を張って学校選択問題を採用し見事にこけたが、それとは事情が違う。

◆端末1人1台はとっくに実現していた
 さて本題である。
 この学校は公立の中でもトップを走るICT教育先進校だ。

 とりあえずICT環境から見ていこう。

1 全普通教室に電子黒板機能搭載のプロジェクターを設置
 県立高校も全普通教室へのプロジェクター設置を完了したが、この学校にあるのは電子黒板機能を搭載した高級機である。
 

電子黒板機能搭載のプロジェクター


2 全生徒にiPad(LTE回線利用可)は5年前から
 生徒全員への端末配布はすでに5年目に入っている。校内のWiFi環境が整っても端末配布が一向に進まない県立との大きな違いだ。
 しかもLTE回線利用可のモデルだから、家庭にWiFi環境が無くても問題ない。

3 理数科生はノートパソコンとの2台持ち
 理数科生にはタブレットのほか、WindowsノートPC(レッツノート)も無償貸与されている。
 タブレットは持ち帰り可、PCは学校専用となっているようだ。
 先生用のPCやタブレットの配備すら遅れている県立とはえらい違いだ。
 

理数科各教室おかれたPC


4 Office365などソフトやアプリも全員登録
 スタディサプリ、Classi ClassiNote、GoogleWorkspaceなどに加えOffice365も全員が登録している。

 まあ、こんな具合だから、昨年の臨時休校期間中もまったく困らなかった。
 毎日4時間の授業と朝と帰りのホームルームをオンラインで実施するのは、先生も生徒も簡単なことだった。
 ふだん使い慣れた端末とソフトをオンラインに移行しただけだから、そうだろう。
 先生の出張などによる自習が無い分、通常より授業が進んだ教科もあったほどだという。

◆市立高校の強みを存分に発揮 
 ICT環境の整備が進んでいるのは何もこの学校だけではない。
 さいたま市の場合、小中高ともにGIGAスクール構想を先取りする形でICT教育を推進してきた。
 その中でも理数科があり、SSH指定校でもある大宮北が先導的役割を果たしてきた。

 昨年の学校休業中の対応に関して、公立と私立の違いがしばしば話題になるが、「素早く対応した私立とまったく対応できなかった公立」という構図は、少なくともこの学校には当てはまらない。
 
 一口で公立と言うが、県立と市立では、さまざまな面で事情が異なるようだ。
 県立は、普通科あり専門学科あり、全日制あり定時制・通信制あり、さらに特別支援ありと幅広く、学校数も格段に多い。
 常に百数十校全体を見渡した施策が求められる。
 対する市立は、川口市には川口市立、川越市には市立川越、さいたま市には市立浦和・浦和南・大宮北・大宮国際中等教育学校というように数が少ないので機動的な施策をとりやすい。
 市立高校の人気が高いのは、個性的な学校づくりが評価されているためだろう。

 さて、環境面では私立も顔負けの大宮北であることは分かった。
 では、それらを利活用した実際の授業はどうなのか。
 また、みんなが気にする大学進学状況はどうなのかといったあたりにも触れなければならないが、これは次回としよう。