世の中、不快なことばかり。あっちでも不快感、こっちでも不快感。
 でも、この言葉、自分自身ではあまり使わない。
 もっぱら新聞やニュースの中で使われる。

 今日のニュースなら、「二階氏、岸田発言に不快感」。
 少し前なら、「尾身氏、バッハ会長再来日に不快感」。
 それを受けて、「自民党、尾身発言に不快感」。

 いやあ、実に便利な言葉だ。
 だから新聞も好んで使う。
 もうちょっと他の言い方ないのかよ、少しは頭使えよと思うが、しかしこれは新聞ばかりを責められない。

 政治家に顕著なのだが、かれらはいきなり「反対」という言葉を口にしないのだ。
 と言うと、いや、野党政治家はすぐに「反対」と言うではないかと思われるだろうが、かれらは「反対」がお仕事なのだ。
 そうではなく、いわば広い意味で身内の関係にあるとき、あるいは決定的な対立を生んではならない状況のとき、そうした場合は明確に「反対」を叫んではいけないのがお約束だ。

 「反対」という語は使わないが、「反対」であることを別の、遠回しな言い方で伝える。
 二階氏の場合なら、幹事長職に任期制を取り入れるべきだと主張する岸田氏に対し、それが「二階辞めろ」に等しいのは承知の上で「自分から名乗りでは覚えは一度もない」と、任期制には一言も触れずに事実上の反論をするのである。
 で、それが新聞記事になったとき、「二階氏、不快感」となる。

 こういう風に、明確に否定したり、反対したりしないというのは、後日の状況変化を考えて、という意味合いもある。
 反対から賛成へ、賛成から反対へと変幻自在であることも政治家には必要なようで、「反対」という語さえ避けておけば、「私は反対と言った覚えはない」と言い逃れ出来るのだ。
 めんどくせー連中だ。

 事実上の否定や反対を表明する際、便利な言い方に「いかがなものか」というのもある。
 「それって、どーよ」の政治家版といったところだ。
 これが新聞の見出しになったときは、おそらく「難色(を示す)」あたりか。

 しかしまあ、こうして人様を批判するようなことを書いている自分自身も、賛成なのか反対なのか、どっちとも取れるような言い方を結構しているね。
 気を付けなければ。