埼玉県教育局は8月30日、今年3月の県内高校(国公私立)卒業者の進路状況調査の結果を発表した。
県の当該ページはコチラ。
教育局教育政策課のページである。
「令和3年3月高等学校卒業者の進路状況調査」
上記ページから見られる結果の概要はコチラ。
調査結果の速報(概要)
今回は速報であり、フルバージョンではない。
後日、高校ごとの進路状況も明らかになるが、いつになるか分からない。
さて、これを受け、埼玉新聞は次のように伝えた。
上記はWEB版であり、紙版の見出しは次のようになっている。
「大学進学最高 60% 県内国公私立高 就職は最低11%」。
新聞やテレビは好んで「最高(または最低)」という言葉を使う。
読者の目を惹きやすいからである。
◆大学進学率60%は驚くべき数字なのか
大学等進学率は、昭和の終わりでは25%に満たなかった。平成の半ばでも50%を下回っていた。
よって60%というのは、「そこまで増えたのか」と感心してもいい数字である。
60%超えは1979年の調査開始初めてであり、したがって過去最高である。
ただし、ここ数年の傾向を見れば、それほど驚くべき数字ではないことがわかる。
一昨年 57.4%
昨年 58.5%(前年比+1.1ポイント)
と来れば、今回は少なくとも59%台後半にはなるだろう、と、そこまでは予測できた。
ところが、ふたを開けてみたら、前年比+2.2%と、予想以上に大きく伸びた。
驚くならそこだろう。
過去最高というなら、昨年の58.5%も過去最高だったし、60%超えは時間の問題だったのだから、大げさに騒ぐほどではない。
だが、新聞としてはインパクトのある数字や言葉を使わざるを得ないので、「最高」「60%」と見出しを掲げるのである。
なお、ここで言う大学等進学率は、当該年度の卒業者のうち実際に大学等に入学した者の数である。
大学等進学を目指しながら、希望校に合格せず、いわゆる浪人となった者は、「その他」に分類される。
今回+2.2%となった要因は、一つは浪人の減少だろう。
ワンランク上を目指して浪人するより、受かった大学等に入学した生徒が多かった。
また昨年、入試制度の変更を嫌い、浪人を避けた生徒が多かったので、今年は現役にとって戦いやすかったとも考えられる。
◆公私の大学進学率の差
公立全日制の卒業者数は3万5927人で大学等進学者数は1万9002人、進学率は52.9%(前年比+2.0ポイント)。
私立全日制の卒業者数は1万4190人で大学等進学者数は1万4190人、進学率は78.8%(前年比+2.5ポイント)。
公私の進学率に大きな開きがあるが、公立は、農業・商業・工業といった職業系学科も含めた数字である一方、私立はほとんどが普通科である点も考慮しなければならない。
が、それを考慮に入れたとしても、私立の進学率の高さは際立つ。
男子の進学率が女子を上回っているのは全国的傾向だが、埼玉県は男女の開きが大きい。
女子の進学率が上昇すれば60%台の半ばあたりまで行く可能性がある。
最新のデータは未確認だが、たしか東京は男女とも70%を超え、かつ女子が男子よりも高い。
以上。
「最高」とか「60%」という数字や言葉だけに反応せず、一次データを当たってみようという話である。
※追記
当初、本文中、「大学進学率」と表記してきましたが、ここで言う「大学進学率」は短大なども含むため、「大学等進学者(率)」と書き換えました。(9月2日)
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