先週は新聞取材のため、さいたま市立大宮北山村学園を訪問した。
 主に進学指導について聞いたわけだが、今後の方向性についての考え方が、この両校、実に対照的で面白かったので、そのことをお伝えしておこう。

◆2年での文理分けを廃する大宮北
 9日に訪問した大宮北は、令和4年度入学生から、2年次における文理のコース分けを廃止する。
 学校では「文理融合型」のカリキュラムと言っている。
 3年生になると、国公立を目指す7教科型と私立を目指す3教科型に分かれるが、2年までは文系理系を問わず全員共通のカリキュラムだ。
 
 理由の一つとして、もはや文系・理系という分類は時代遅れであるという考え方がある。
 世界の事情には疎いのでよく分からないが、文系だ理系だと分けるのは日本独特の発想であるらしい。
 たしかに、文系と称される職業に就くにしても、確率や統計や微分や積分はやっておいて損はない。
 科学の論文だって英語で書くわけだから、国語や英語に弱くちゃ話にならん。
 世界で活躍しようというなら、自国の歴史や文化ぐらい知っておけよ。ついでに芸術のこともな。
 となると、結局「全部入り」の教育課程ということになる。

 もう一つ現実的な問題としては、文理分けは1年生の6月ぐらいまでには希望をとって決めておかなければならないという事情がある。
 教員の採用や異動といった人事問題、教科書の需給の問題もからむので、早めの決定が迫られる。
 だが、ついこの間高校に入ったばかりの1年生に、来年は文系か理系と選ばせるのはどうなのかという考え方もある。

 まあ、そうした観点から、ではいっそ2年までは文理分け無しで、となった模様である。
 加えて、学力レベルの割には国公立希望者・合格者が少ないので、これをもっと増やしたいという大宮北特有の事情や思惑もあるのだろう。

◆山村学園は数理無しの文系、国社無しの理系新設
 11日(土)に訪問した山村学園は、2日前の大宮北とは全く異なる方向を目指していた。
 令和4年度は3コース制に改編する。
 最上位の「SAコース」は2年次からの文理分けはあるが、国公立志向のコースなので、文理どちらを選んでも5教科すべてを学ぶ。異なるのは単位数。

 特徴的なのは、「SA」に次ぐ2番目の「ELコース」だ。
 理系を選ぶと2・3年次では国語と社会の科目はない。
 文系を選ぶと2・3年次では数学と理科の科目はない。
 細かく言えば、文系の生徒は3年次で数学演習、化学演習といった科目も選べたりもするが、完全な私立大学受験型カリキュラムだ。
 一応、2年進級時に、国公立型の「SA」に鞍替えする道も残されているが、ここまで徹底した理系シフト、文系シフトは滅多にお目にかかれない。

 はたして、この思い切りの良さが、どこまで受験生・保護者に受け入れられるか。
 注目して見て行きたい。
 3番目に位置する「GL」コースは、いわゆる総合進学というもので、指定校推薦狙いや、部活重視の生徒の受け皿となるだろうが、こちらの文理分けの方がオーソドックスな形に近く、文系2年でも数Ⅱや数Bがあったりする。
 高校1年次での文理分けでも生徒は迷うものだが、それをさらに前倒しし、高校受験段階で文理を決めさせるようなものだから、相当に丁寧な説明が求められるだろう。

 とまあ、こんな具合で、たまたまではあるが、短期間で方向性が正反対とも言える2つの学校を取材したので、報告した次第である。