昨日は「よみうり進学メディア11月号」の取材で栄北高校を訪問した。
今回の特集は、「これが高校の授業だ」というもので、授業を1時間まるごと参観してレポートする。
参観したのは3年理系クラスの数Ⅲの授業。
担当は教員12年目の兼杉僚太先生。
教員10年目から20年目あたりが、経験と情熱のバランスがちょうど良い頃合いというのが私の持論だが、正にそのど真ん中。
この日の授業は、オンラインや分散登校といった夏休み明けのイレギュラーな状態から、正常への復帰過程ということで40分だった。
冒頭、ノーベル物理学賞にサラッと触れて、直ちに本題に入る。
短縮授業ということもあるのだろうが、ものの1、2分で切り上げ、決して深入りしない。
これがちょっとでも延びると、生徒の集中がそちらに向かってしまうから、本題への切り替えにひと手間かかってしまう。
そうならないように絶妙なタイミングで余談を切り上げる。
さすが10年選手といったところだ。
授業は淡々と問題演習を進めるだけ。
これを中学生向けにどうレポートするか。それは後で考えよう。
生徒は24人。うち女子が3人。
理系最上位クラスということで、すでに数Ⅲ教科書は3年5月までに終わっている。
できれば高2までに終わらせておきたいところだが、中高一貫ではないこの学校としては、これがギリギリか。
1回の授業で入試過去問を3題ほど解く。
週6単位だから1週間で18題、1か月で72題、これを半年続ければ400題以上にはなる計算だ。
これが多いのか少ないのかは専門ではない私には分からない。
生徒の負担や他教科とのバランスを考え、宿題を出したり予習を求めたりはしないようだ。
授業完結型と言えばいいのだろうか。
教科書は終えているので、解き方を丁寧に説明するということはない。
生徒はひたすら問題に挑む。
先生はかなり頻繁に机間巡視(きかんじゅんし)する。
グルグル回るわけだ。
生徒の方は、自力で解こうとしている割合が多いが、隣同士相談している者もいる。相談は自由らしい。
そういう姿は見られても、生徒は私語というものを一切発しないから、教室内はいたって静かだ。
先生は回りながら質問を受けたり、ノートを覗き込んでアドバイスをしながら、時々黒板に戻ってヒントを出す。
数Ⅲは今やすっかり忘れてしまったので確かなことは言えないが、答えに直結するヒントではなく、それよりもうちょっと手前で止めている。そんな感じだ。
中には東大を目指している子もいて、そういう子は、さっさと解いて次の問題を解き始めているが、もちろんそれはオーケー。
集団指導でありながら個別指導の要素もうまく取り入れた授業と言えるだろう。
ある程度経験を積まないと、このスタイルは上手く行かない。
経験の浅い先生だと、一人に関わり過ぎて他の生徒が遊んだり、暇を持て余してしまったりするするものだが、そうさせないのところが実にお見事。
ところで。
栄北にはこれまでも何度か授業を見に行っているが、行くたびに生徒のレベルは上がっているように感じる。
ご存知のように栄北は佐藤栄学園グループの1校だ。
1972年 埼玉栄
1978年 栄東
1982年 花咲徳栄
2000年 栄北
こんな順番で設立されている。
栄北はグループでは一番若い学校だ。
設立当初は埼玉栄から移設された自動車科があったりして、大学進学を目指す学校というイメージはなかった。
しかし、3、4年前自動車科は廃止となり完全普通科校となった。
設立当時のことを今でもよく覚えているが、その頃から面倒見の良い学校という印象はあった。
いや、印象だけでなく実際にそうだった。
知り合いの子が、どこも行くところがないというので栄北を勧め、仕方なく入った。
親からは絶対に学校のことを内緒にしてくれと言われた。
もしバレたら町を歩けないなどと、ひどい言い様だった。
先生のくせして何という言い草だ。
そう。親は公立学校の先生だったのだ。
だが、数か月たち1年経つうちに態度が豹変した。
こんないい学校はない、ぜひみんなに紹介して欲しい。
えっ、内緒にしとくんじゃなかったっけ。
まあ、その子の性格や環境にもよるんだろうが、先生の子というのは意外と先生不信になりやすい。
そりゃあ普段の姿見てたらリスペクトなんか出来んだろう。
そういうへそ曲がりをちゃんと直して、しっかり大学まで入れてくれたのが栄北だった。
というわけで、私の中で学校としての印象は悪くないのだが、大学進学はそれほど期待できない。
と、思っていたら、「地味にジワジワ来てる」のが最近の栄北だ。
スポーツ中心とばかり思っていた花咲徳栄も一般入試で旧帝や早慶に入るようになったし、私立はちょっと目を離している隙にいつの間にか進学実績を上げてくる。
むろんこれは佐藤栄グループだけでなくすべての私立に言えることだ。
栄北の今春の卒業生は329人。3年前の入学者が337人であるから僅か8人しか欠けていない。
卒業生のうち大学進学者(実際に入学した者)は296人で大学現役進学率は90.0%。これは早大本庄・慶応志木・立教新座を別格とすれば、県内公私立では大宮開成と並んで9番目となる。短大と専門学校が少しずついて、就職はゼロ。
学校パンフなどでは「大学現役合格率96.7%」と謳っているが、私の計算に誤りがなければ「大学現役進学率」は90.0%である。どっちにしろ高い。
問題は中身なのだが、国公立は31人とまずまずだが旧帝など難関にはまだ手が届いていない。早慶上智も足して13人。これもまだまだ。ただ、MARCHレベルになると、中央44人、法政26人、立教17人などなかなかの数字を残している。
この日見たのは特類という最上位クラスだったこともあるが、普段からこういう授業を受けていれば、こらからも着実に進学実績を上げて行けるだろう。
大宮駅からニューシャトルで15分、丸山駅から徒歩3分というアクセスの良さもこの学校の大きなアドバンテージだ。
コメントを残す