文部科学省は10月25日、オンラインで学習指導を受けた児童生徒が、指導要録上「出席停止・忌引き等」の欄に記載されることについて、記入欄を別の名称に変更できるとの通知を都道府県教育委員会等に出した。
私はこれまでも何回かこのブログで、コロナに関わる欠席や出席停止について書いた。
結論はその都度書いているように、「入試において不利になることはない」のである。
だが、世の中には受験生や保護者の不安を煽りたい人々がいる。
この2年間、こういう連中のおかげで、どれだけ振り回されたことか。
さて今回は、指導要録である。
学校の先生方は、業務の一環として実際に作成しているわけだから、今さら説明の必要はない。
それ以外の方は、存在は知っていても実物は見たことはないと思う。
イメージをつかみたければ、文部科学省のサイトに参考様式が載っている。
指導要録(参考様式):文部科学省
参考様式とあるのは、様式は全国一律ではなく、都道府県教育委員会等がそれぞれ定めるものだからである。
◆指導要録とは
指導要録は、必ず作成しなければならない表簿である(学校教育法施行規則24条)。
学校が備えなければならない表簿は指導要録以外にも多々ある(学校教育法施行規則28条)。
これら表簿類の保存期間は通常5年間であるが、指導要録の学籍に関する記録は20年保存である。
指導要録の作成者は法律的には校長であるが、実務は担任等が行う。
◆総合所見だけは面倒だ
私も担任として指導要録を作成したことがある。
毎年新しいものを作るのではなく、次の学年に引き継がれて行くものである。
難しいことは何もなく、事実を淡々と書くだけの事務作業だ。
ただ、「総合所見」だけはちょっと面倒だ。
「おとなしく控えめだが、真面目にコツコツ努力する生徒である」みたいなのを一人一人書く。
私は3年担任が多かったので、1・2年の記述も見るわけだが、担任の中には、使う単語が「真面目」「努力家」などほぼワンパターンなやつもいる。
外に出ることのない書類だと思って手抜きしてる。
何度も担任をやった割に記憶が少ないのは、副担任がかなり手伝ってくれたからだろう。
私のクラスになった生徒も可哀想だが、私の副担に付いた先生も可哀想だったのだ。
◆指導要録はいつ書くか
その学年の記録が全部出ないと書けないから、当然学年末ということになる。
春休みの仕事だ。
新年度になってもまだ完成せず、教頭や教務主任に怒られてるやつもいたな。
世間では調査書と指導要録がゴッチャになっている人も多いと思う。
また、マスコミもわざとそういう方向に誘導しているようなところもある。
調査書は入試の出願までに書かなければならないが、指導要録はそれらが終わってから書くものだ。
入試終了後に作成される指導要録の記述が、どうして入試に影響すると言うのだ。
しかも、しつこいほど言っているように、仮にオンラインが出席停止として扱われたとしても、出席停止は欠席ではないから欠席日数には加算されない。
さらに言えば、欠席日数は合否の判断材料にはならない。
◆都道府県や市町村の判断
今回、文部科学省は指導要録上の「出席停止・忌引き等」の名称変更は可能だとしている。
また、変更する場合、どういった名称にするかは各設置者が判断してくださいとしている。
設置者というのは県立学校だったら県教委、市立学校だったら市教委。
そこまで言っているんだから、県教委や市教委は変更するにしてもしないにしても独自に判断すればいい。
そのための教育委員会だ。
そもそも論で言えば、中学校・公民の教科書にあるように、教育委員会は教育の地方自治を進めるために作られた組織・制度だ。
文部科学省の下請けではない。
国としての大きな方向性を定めるのは文部科学省だとしても、地域にはそれぞれ特性があるわけで、各地域の事情や住民の要望を踏まえて、独自の政策を実施することが可能だ。
文部科学省がそれぞれで判断してくださいと言っているなら、「では、独自にやらせてください」でいいではないか。
まあ実際のところは、人事や予算面で文部科学省に首根っこを押さえられていて、それほどの自由はないのかもしれないが、もう少し独自性を発揮して欲しいものだ。
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