1月15日、県は2022年度(令和4年度)私立高校応募状況を発表した。
 先生方ご存知のとおり、私立学校を所管するのは埼玉県総務部学事課という部署である。
 時々保護者から教育委員会のホームページを見ても出ていないんですけど、と質問されるが、指揮命令系統が異なるのである。
 もっとも、どちらも辿って行けば埼玉県知事に行き着く。

 といった話はどうでもよくて、とりあえずこの件を報じる埼玉新聞の記事である。
「平均倍率は4.20倍 埼玉県、私立高校の入試状況を発表 最高は22.6倍、7年連続で栄東 続く高校は」

 はて、平均倍率に意味はあるのか?
 最高倍率に意味はあるのか?

 まあ現行の県内私立の入試システムからして、ゼロとは言わんが、ほとんど意味はない。
 先生方はもちろん、受験生も保護者もそこは大体分かっている。
 記者も、編集デスクも公立との違いを知らぬわけはないが、見出しとしては「最高!」と謳わざるを得ないということだろう。

◆応募者トップは浦和学院
 私立は普通科がほとんどだが、その中にコースや類型などがある。
 また、一般や推薦、単願や併願といった入試区分(種類)がある。
 入試日(入試回)を複数設けている学校もある。
 それらを全部ひっくるめて、単純に応募者総数を算出してみたのが以下の結果である。
 なお、この中に内部進学者は含まれていない。

01 浦和学院 3401人
02 浦和実業 3364人
03 栄東   2713人
04 花咲徳栄 2494人
05 早大本庄 2406人
06 埼玉栄  2396人
07 開智   2244人
08 叡明   2234人
09 山村学園 2063人
10 川越東  2021人

11 西武台  1964人
12 武南   1854人
13 春日部共栄1829人
14 秀明英光 1782人
15 大宮開成 1705人
16 栄北   1661人
17 国際学院 1442人
18 浦和麗明 1408人
19 本庄東  1333人
20 正智深谷 1325人

21 星野   1318人
22 東野   1312人
23 慶応志木 1257人
24 山村国際 1178人
25 埼玉平成 1146人
26 立教新座 1144人
27 東京成徳大深谷1100人
28 昌平   1097人
29 細田学園  979人
30 本庄第一  962人

31 聖望学園  959人
32 武蔵越生  944人
33 東京農大三 942人
34 西武文理  929人
35 狭山ヶ丘  901人
36 淑徳与野  713人
37 独協埼玉  657人
38 秋草学園  488人
39 城西川越  473人
40 城北埼玉  311人

41 開智未来  224人
42 大妻嵐山  184人
43 自由の森学園151人
44 秀明    34人
45 東邦音大東邦第二20人
46 青学大系属浦和ルーテル学院14人
47 武蔵野音大附属10人

 以上47校。
 募集人員(外部募集人員)が多い学校ほど、受験者総数も多いようだ。たとえば応募者総数がもっとも多い浦和学院の募集人員は800人で県下最大だ。浦和実業の募集人員は640人でそれに次ぐ規模だ。埼玉栄は589人、花咲徳栄と叡明は520人、川越東と山村学園は400人と上位10校は募集人員が多い学校が中心だ。例外は120人募集の栄東と、220人募集の開智の2校で、公立上位校との併願者が多いことが伺える。

◆見かけの倍率
 最初に書いたように、私立の倍率は競争の激しさや、そのまま学校の人気を表すものではない。学校によっては、過去1、2年の入学者が多過ぎたため、推薦基準を上げるなどして応募者数の抑制を図っている場合もある。
 とは言え、ちょっとは気になるので、(総応募者数÷外部募集人員)により「見かけの倍率」を算出してみた。

01 栄東   2713÷120=22.6
02 立教新座 1144÷100=11.4
03 開智   2244÷220=10.2
04 早大本庄 2406÷320=7.52
05 国際学院 1442÷240=6.01
06 慶応志木 1257÷230=5.47
07 浦和実業 3364÷640=5.26
08 栄北   1661÷320=5.19
09 山村学園 2063÷400=5.16
10 川越東  2021÷400=5.05

11 西武台  1964÷480=4.91
12 山村国際 1178÷240=4.91
13 春日部共栄1829÷380=4.81
14 花咲徳栄 2494÷520=4.80
15 武南   1854÷400=4.64
16 大宮開成 1705÷380=4.49
17 秀明英光 1782÷400=4.46
18 浦和麗明 1408÷320=4.40
19 叡明   2234÷520=4.30
20 本庄東  1333÷310=4.30

21 浦和学院 3401÷800=4.25
22 独協埼玉 657÷160=4.11
23 埼玉栄  2396÷589=4.07
24 東京成徳大深谷1100÷280=3.93
25 正智深谷 1325÷360=3.68
26 東野   1312÷350=3.75
27 聖望学園 959÷268=3.58
28 埼玉平成 1146÷343=3.34
29 西武文理 929÷280=3.32
30 淑徳与野 713÷240=2.97

31 昌平   1097÷375=2.93
32 本庄第一 962÷330=2.92
33 東京農大三942÷330=2.85
34 星野   1318÷490=2.69
35 開智未来 224÷90=2.49
36 武蔵越生 944÷380=2.48
37 狭山ヶ丘 901÷370=2.44
38 細田学園 979÷410=2.39
39 城西川越 473÷200=2.37
40 城北埼玉 311÷140=2.22

41 秋草学園 488÷280=1.69
42 大妻嵐山 184÷135=1.36
43 自由の森学園151÷140=1.08
44 青学大系属浦和ルーテル学院14÷15=0.93
45 秀明    34÷40=0.85
46 東邦音大東邦第二20÷40=0.50
47 武蔵野音大附属10÷60=0.17

 早大本庄、慶応志木、立教新座は、ある程度多めの合格者は出すものの、当日の学力試験結果により合否を決めるので倍率は競争の激しさの指標となり得る。しかし、それ以外の学校は、合格者数は応募者数(受験者数)に限りなく近いので、倍率だけを見て競争の激しさを判断することはできない。

◆22日に公立が説明会を実施する意味は
 私立の試験日は申し合わせによる解禁日である1月22日と翌23日に集中している。
 特に22日は、慶応志木、淑徳与野、東邦音大東邦第二を除く44校がいずれかの区分の入試を実施する。翌23日は春日部共栄、川越東、星野、本庄第一など9校を除く38校が実施する。24日はかなり減るが、それでも16校が実施する。
 つまり、全日制高校進学を目指す県内受験生のほとんどが、22日か23日のどちらかが入試日となると推定される。

 そんな最中、22日に説明会や相談会を計画している公立が30校ある(総合教育センター発表の日程表による)。東部10校、西部9校、南部6校、北部5校で計30校。

 私立は受けず公立のみという生徒もいる。仮に落ちても欠員補充があるから、とにかく公立一本。そういう生徒を対象として開くなら、それは一つの考え方、方法としてありだろう。
 受験生・保護者側としては経済的事情もあるだろうし、学力的事情もあるだろう。学力面で言うと、偏差値が50を下回ると「いわゆる確約」をとれる学校(コース等)がガクンと減ってしまう。
 受験生を上位、中位、下位と三層に分けた場合、下位層だと私立との併願が難しいという実態がある。そういう生徒に対しても、しっかりと学びの場を提供するのも公立の役割である。
 そう考えれば22日、23日に私立入試を受けない生徒を対象とした説明会等を実施するのはあながち否定できない。ただ、ほとんどの受験生が上位、中位に属すると推定される公立が、わざわざ私立入試本番やその前日に説明会や相談会をぶつけてくるのは相変わらず理解に苦しむ。

 本日は私立入試に関する情報をお伝えした。